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亜鉛を豊富に含む食べ物は?亜鉛のはたらきや食事摂取基準も紹介

メディパレット編集部

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亜鉛を豊富に含む食べ物は?亜鉛のはたらきや食事摂取基準も紹介

「亜鉛はどんな食べ物に含まれているのかな?」

亜鉛はヒトの体に必要なミネラルの一つですが、多く含んでいる食品をご存じの方は少ないのではないでしょうか。

ミネラルといえばカルシウムや鉄がイメージされがちですが、亜鉛も健康を維持するために重要な栄養素です。

この記事では亜鉛を豊富に含む食べ物や亜鉛の過不足による影響について詳しく解説します。

1日に必要な量や、摂取の効率を上げるポイントもご紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。

1.亜鉛とはどんな栄養素?どうはたらく?

ボトルを手に取る女性

「亜鉛ってそもそもどんな栄養素なんだろう……」

亜鉛はヒトの健康に欠かすことのできない「必須ミネラル」の一つです。

メモ
ミネラルは地球上に存在する元素のうち、生物の体の主要な構成成分である酸素、炭素、水素、窒素以外の総称です。必須ミネラルはこのうちヒトの体に欠かせない16種類を指します[1]。

ミネラルについて詳しくはこちら

体内に約2,000mg存在し[2]、多くの酵素の成分となります。

酵素とは
酵素は体内で起こる消化や吸収、代謝などのほぼ全ての化学反応に触媒として関わるたんぱく質です。酵素はそれぞれ異なるはたらきを持つため、ヒトの体内には多くの種類の酵素が存在しています。

またたんぱく質の合成や遺伝子の発現にも深く関わり、細胞の成長や分化においても中心的な役割を担っています。

このため胎児や乳幼児の成長にとって重要な栄養素だといえるでしょう。

この他にも、亜鉛には免疫反応の調節や正常な味覚の維持に関わったり、皮膚や粘膜の健康を保ったりするはたらきがあります。

亜鉛はこのようにヒトの体に必要なはたらきを担っていますが、体内で作ることができないため食事からの十分な摂取が必要です。

[1] 国立研究開発法人国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識

[2] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)

【関連情報】 「亜鉛のはたらきと1日の適切な摂取量とは?亜鉛を多く含む食品も紹介」についての記事はこちら

「亜鉛に期待できる効果とは?摂取目安量やおすすめの食品を紹介!」についての記事はこちら

2.亜鉛を豊富に含む食べ物とは

生の貝類

「亜鉛を豊富に含む食べ物を知りたい!」

亜鉛は魚介類、肉類、乳類、穀類、豆類、ナッツ類などの食べ物に多く含まれています。

この章では亜鉛を豊富に含む食べ物を動物性食品と植物性食品の二つに分けてご紹介します。

亜鉛を毎日の食卓に取り入れるための参考にしてくださいね。

メモ
この章でご紹介する食品は食品表示基準において100gもしくは100kcal当たりの亜鉛含有量が「豊富である」と表現できるものです[3]。

[3] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック

2-1.亜鉛を含む動物性食品

カットした生の牛肉

亜鉛を豊富に含む動物性食品は以下のとおりです。

【亜鉛を多く含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
かき
14.0mg
かたくちいわし
煮干し
7.2mg
いか
するめ
5.4mg
たらばがに
3.2mg
豚レバー
6.9mg
牛肩ロース
5.6mg
牛リブロース
5.2mg
牛ひき肉
5.2mg
ラム肩肉
5.0mg
パルメザンチーズ
-
7.3mg
チェダーチーズ
-
4.0mg
ゴーダチーズ
-
3.6mg
卵黄
3.6mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

かきには亜鉛が豊富に含まれているとご存じの方は多くいらっしゃることでしょう。

他の食品と比較してもその含有量はずば抜けていることが分かりますね。

その他にもたらばがにや豚レバー、牛肩ロースなどからも亜鉛を摂取できますよ。

【関連情報】 「牡蠣に含まれる栄養素とそのはたらきは?食べる際の注意点も解説」について詳しくはこちらの記事をご覧ください

「鶏・豚・牛レバーに含まれる栄養素は?選び方や下処理の方法も解説」について詳しくはこちらの記事をご覧ください

2-2.亜鉛を含む植物性食品

カシューナッツ

亜鉛を豊富に含む植物性食品は以下のとおりです。

【亜鉛を多く含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
焼きのり
-
3.6mg
きなこ(黄大豆)
-
4.1mg
レンズ豆
乾燥
4.8mg
ひよこ豆
乾燥
3.2mg
小麦粉(強力粉)
全粒粉
3.0mg
まつの実
いり
6.0mg
カシューナッツ
フライ
5.4mg
アーモンド
いり
3.7mg
ごま
いり
5.9mg
らっかせい
いり
3.0mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

亜鉛を豊富に含む植物性食品には、小麦はいが、レンズ豆、カシューナッツ、アーモンドなどがあります。

ナッツ類は間食などとして手軽に取り入れられますね。

【関連情報】 「ナッツの種類と栄養素、その効果を徹底解説!食べると太るって本当?」について詳しくはこちらの記事をご覧ください

3.亜鉛の不足や過剰摂取による影響

朝食をとりながら悩む女性

「亜鉛が不足するとどんな症状が出るんだろう?」

「亜鉛は摂り過ぎても健康に良くないのかな」

このように気になる方もいらっしゃいますよね。

この章では亜鉛の不足と過剰摂取による影響についてご紹介します。

3-1.亜鉛の不足による影響

亜鉛が不足すると味覚障害や皮膚炎、食欲低下などが起こることが分かっています。

しかしこれらの異常を来すメカニズムは未だ明らかにされていません。

この他に亜鉛の不足により免疫機能の低下や慢性の下痢、貧血、精神障害などが生じる可能性もあるといわれています。

また小児で亜鉛が不足した場合には成長や性線の発育に障害が見られます。

亜鉛の不足はさまざまな体調不良を引き起こすのですね。

亜鉛不足は食事からの摂取が足りない場合の他、何らかの事情により体内での必要量や排せつ量が増えた場合にも起こります。

また病気などで亜鉛が添加されていない高カロリー輸液や経腸栄養などで栄養素を摂取している場合、亜鉛に作用する薬剤の服用でも不足する可能性があります。

心当たりのある方は、亜鉛の摂取量を増やすように心掛けてくださいね。

3-2.亜鉛の過剰摂取による影響

通常の食生活をしている限りでは、亜鉛を過剰摂取する心配はほぼありません。

しかし長期間亜鉛のサプリメントを摂取し続けた場合には、銅や鉄の吸収が阻害されることで貧血や免疫障害、下痢、神経系の異常やHDLコレステロール(善玉コレステロール)が減少する場合があります

メモ
コレステロールはヒトの体内に存在する脂質の一種です。たんぱく質などと結合して血中に溶け込んでいるコレステロールにはHDLコレステロール(善玉コレステロール)とLDLコレステロール(悪玉コレステロール)があり、前者が減り過ぎたり後者が増え過ぎたりすると、心筋梗塞や脳梗塞、脳出血などの原因となる動脈硬化が進行します。

また一度に大量の亜鉛を摂取すると急性亜鉛中毒となり、胃の痛みや、めまい、吐き気などが生じる場合があります。

4.亜鉛の食事摂取基準と平均摂取量

アナログな計り

「1日にどのくらいの亜鉛を摂れば良いんだろう」

このように気になる方もいらっしゃいますよね。

また普段の生活で亜鉛をどのくらい摂取しているのかイメージできないという方もいらっしゃるかもしれません。

厚生労働省は国民の健康の保持・増進や生活習慣病の予防を目的とし、栄養素の1日当たりの摂取量の基準を「食事摂取基準」として発表しています

ここからは亜鉛の食事摂取基準と実際の摂取状況をご紹介します。

4-1.亜鉛の食事摂取基準

厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」において、亜鉛の食事摂取基準を以下のように設定しています。

【亜鉛の食事摂取基準(mg/日)】
※横にスクロールできます
性別 男性 女性
年齢 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量 推定平均必要量 推奨量 耐容上限量
1〜2歳
2.5
3.5
-
2.0
3.0
-
3〜5歳
3.0
4.0
-
2.5
3.5
-
6〜7歳
3.5
5.0
-
3.0
4.5
-
8〜9歳
4.0
5.5
-
4.0
5.5
-
10〜11歳
5.5
8.0
-
5.5
7.5
-
12〜14歳
7.0
8.5
-
6.5
8.5
-
15〜17歳
8.5
10.0
-
6.0
8.0
-
18~29歳
7.5
9.0
40
6.0
7.5
35
30~64歳
8.0
9.5
45
6.5
8.0
35
65~74歳
7.5
9.0
45
6.5
7.5
35
75歳以上
7.5
9.0
40
6.0
7.0
35

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成

メモ
推定平均必要量は約半数の人の必要量を満たす量で、推奨量はほとんどの人にとって十分な量です。目安量は一定の栄養状態を維持するのに十分な量で、この量以上を摂取していれば不足の心配はほとんどありません。耐容上限量は過剰摂取による健康障害の回避を目的に設定された量です

なお、1歳未満の乳児に対しては目安量が設定されています。

【亜鉛の食事摂取基準(mg/日】
性別 男女共通
月齢 目安量
0〜5カ月
1.5
6〜11カ月
2.0

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成

目安量とは
一定の栄養状態を維持するのに十分な量で、この量以上を摂取していれば不足の心配はほとんどありません。耐容上限量は過剰摂取による健康障害の回避を目的に設定された量です。

また中期及び後期の妊婦・授乳婦は亜鉛の必要量が増加するため、付加量が設定されています。

【妊婦・授乳婦の付加量(mg/日】
推定平均必要量 推奨量
妊婦(中期・後期)
+2.0
+2.0
授乳婦
+2.5
+3.0

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成

4-2.亜鉛の平均摂取量

厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」によれば、亜鉛1日当たりの平均摂取量は以下のとおりです。

【亜鉛1日当たりの平均摂取量】
年齢 男性 女性
1~6歳
5.7mg
5.2mg
7~14歳
9.3mg
8.3mg
15~19歳
11.4mg
8.6mg
20~29歳
9.8mg
7.3mg
30~39歳
9.1mg
7.3mg
40~49歳
9.4mg
7.8mg
50~59歳
9.2mg
7.5mg
60~69歳
9.3mg
8.0mg
70~79歳
9.1mg
8.0mg
80歳以上
8.3mg
7.2mg

厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」をもとに執筆者作成

食事摂取基準と比較すると、多くの年代で推定平均必要量には達していても推奨量は満たしていないことが分かります。

亜鉛が不足しないよう、日々意識して摂取する必要があるといえるでしょう。

5.亜鉛の摂取についてのポイント

亜鉛を摂取する際のポイント

「亜鉛を効率良く摂取するポイントはあるのかな?」

亜鉛はクエン酸やビタミンC、動物性たんぱく質と一緒に摂ることで効率良く吸収できるといわれています。

このため亜鉛を多く含む肉類や魚介類などの食べ物は、吸収という点でも優秀だといえるでしょう。

ビタミンCはキウイフルーツやレモンなどの果物や、ブロッコリー、ピーマンなどの野菜に豊富に含まれています。

またクエン酸はレモン果汁や梅干し、カシス、パッションフルーツなどに含まれています。

動物性たんぱく質であるかきにビタミンCとクエン酸が豊富なレモンを搾ることは、亜鉛の摂取方法として極めて理想的といえるでしょう。

一方で穀類や豆類、ナッツなどの植物性食品に多く含まれるフィチン酸や加工食品に多く含まれるポリリン酸は亜鉛の吸収を妨げます

また食物繊維、カルシウム、乳製品(カルシウムを含むため)、コーヒー、オレンジジュースなどの食べ物・飲み物も亜鉛の吸収を阻害するため、亜鉛を摂取する場合には注意が必要です。

さらにアルコールの摂取も亜鉛の排せつを増やすため、控えた方が良いでしょう。

6.亜鉛を含む食べ物についてのまとめ

亜鉛はヒトの体に欠かせない必須ミネラルの一種です。

多くの酵素の成分となる他、遺伝子の発現や免疫機能、生殖機能などに関わり、皮膚や嗅覚、味覚などを健康に保つはたらきもあります。

亜鉛を豊富に含む食べ物として、動物性食品にはかき、豚レバー、牛肉、パルメザンチーズなどがあります。

また亜鉛を豊富に含む植物性食品にはレンズ豆、カシューナッツ、アーモンドなどがあります。

亜鉛不足は味覚障害や皮膚炎、脱毛や貧血などの原因となり、子どもでは成長障害や性腺発育障害が起こる危険があります。

一方、過剰摂取は通常の食事をしていればまず起こりませんが、亜鉛サプリメントを長期間摂り続けると貧血や下痢、免疫障害などが起こる場合があります。

日本人の亜鉛摂取量は多くの世代で推奨量に達していないため、日々の食事で亜鉛を含む食べ物を意識的に摂取するようにしましょう。

亜鉛は動物性たんぱく質やビタミンC、クエン酸と一緒に摂取すると効率的に吸収できますが、フィチン酸やポリリン酸などと一緒に摂取すると吸収が妨げられるため注意が必要です。

日々の食生活で、効率的に摂取するための参考にしてくださいね。

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執筆者 メディパレット編集部

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