お菓子やおつまみで人気のナッツは身近な食品である一方で、その定義や種類について詳しく知っているという方は少ないのではないでしょうか。
一般的に「ナッツ」と呼ばれるものには、木の実や種、豆の仲間など幅広いものが含まれています。
この記事では、ナッツとはなんなのか、その種類、それぞれのナッツに豊富に含まれている栄養素などを徹底解説します。
1.ナッツの基礎知識
おつまみやお菓子で身近なナッツですが、
「よく考えたらナッツの定義ってなんなの?」
と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
また、
「カロリーが高そうだけど……太らないの?」
といった疑問も頭に浮かぶかもしれません。
まずはナッツの基礎知識についてご説明しましょう。
1-1.ナッツの定義は?種?豆?木の実?
ナッツとは、一般に硬い殻を持つ植物の果実や種子の総称です。
多くは樹木や低木の種子で、「木の実」と呼ばれることもありますが、草の種子や一部の豆類が含まれることもあります。
ナッツは、文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」では「種実類」に分類されます。
1-2.カロリーが気になる……太らないの?
体型維持や健康のためにカロリーを気にしているという方も少なくありませんよね。
「ナッツはカロリーが高いって聞くけど……太るんじゃないの?」
と不安に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
確かにナッツには脂質が多く含まれている傾向があり、カロリーは決して低いとはいえません。
糖質制限におすすめのナッツ
代表的なナッツの100g当たりのカロリーは以下のとおりです。
ナッツ | 加工状態 | カロリー |
---|---|---|
アーモンド | ||
くるみ | ||
カシューナッツ | ||
マカダミアナッツ | ||
ピスタチオ | ||
ヘーゼルナッツ | ピーカンナッツ(ぺカンナッツ) | |
ブラジルナッツ | ||
ココナッツ | ||
ピーナッツ |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
しかし、ナッツを食べたからといって必ずしも太るとは限らないと考えられます。
【関連情報】 「カロリー」についてもっと知りたい方はこちら
1-2-1.ナッツの脂質は体に良い
カロリーは高いものの、ナッツに含まれている脂質は肥満や不健康に直結するものばかりではありません。
むしろナッツの多くには体に良い作用を持つ「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」がたっぷりと含まれています。
度を越して食べ過ぎてしまわない限り、体への悪い影響は他の脂っこい食べ物などよりは小さいと考えられるでしょう。
脂質というと、「肥満の原因になったり生活習慣病を招いたりする」という悪いイメージがありますよね。
実は、肥満の原因となったり血中の悪玉コレステロールを増やして心筋梗塞などの循環器系の病気を招いたりするのは主に「飽和脂肪酸」と呼ばれる種類の脂質です。
飽和脂肪酸は体内で生成できるため食事から摂る必要のない栄養素であり、摂り過ぎると体に良くない影響がたくさん起こります。
しかし、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸と呼ばれる群に属するものは、必ずしも体に悪い影響を与えるものではありません。
例えば代表的な一価不飽和脂肪酸である「オレイン酸」には、血液中の悪玉コレステロールを減らすはたらきがあります。
また多価不飽和脂肪酸は血圧を下げたり悪玉コレステロールを減らしたりする作用を持っています。
代表的なナッツに含まれている脂肪酸の量を種類別に確認してみましょう。
ナッツ | 加工状態 | 飽和脂肪酸 | 一価不飽和脂肪酸 | 多価不飽和脂肪酸 | 脂肪酸総量 |
---|---|---|---|---|---|
アーモンド | |||||
カシューナッツ | |||||
マカダミアナッツ | |||||
ピスタチオ | |||||
ヘーゼルナッツ | ピーカンナッツ(ぺカンナッツ) | ||||
ブラジルナッツ | |||||
ココナッツ | |||||
ピーナッツ |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
ナッツによって比率は異なりますが、ナッツに含まれる脂質の多くは一価不飽和脂肪酸であることが分かりますね。
なお、アーモンドに含まれる一価不飽和脂肪酸のうち99%はオレイン酸です[1]。
ナッツの脂のなかには体に良いはたらきを持ったものもたくさんあるのですね。
[1][日本ナッツ協会「アーモンド」
[2][厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
1-2-2.太る要因はカロリーだけじゃない!?
さらに近年の研究では、健康的な体重の達成や維持のためにはカロリー摂取量だけでなくどのような食品からカロリーを摂取するかということも大きく関わることが分かってきています。
健康的な体重を目指したり維持したりするために摂取カロリーを適切に保つことが重要なのは皆さんご存じですよね。
しかしそれだけでなく、飽和脂肪酸の多い食品や血糖値が上がりやすい食品などを避け、野菜や果物、健康的な脂質の含まれた食品を選ぶことも大切です。
ナッツに多く含まれている脂質は、まさに「健康的な脂質」の一種だといえるでしょう。
また、ナッツの多くは糖質の含有量が少なく、脂質や糖質を吸着して体外に排出するはたらきのある食物繊維を豊富に含んでいます。
カロリーは高いものの、食べ方によっては健康的な体重維持の味方になってくれる場合もあるといえるでしょう。
2.ナッツ10種類徹底解説!栄養素や効果は?
ナッツにはさまざまな種類があります。
含まれている栄養素も種類によってさまざまです。
「栄養価が高いって聞いたけど結局どのナッツが一番良いの?」
といった疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここでは10種類のナッツを取り上げ、それぞれに豊富に含まれている栄養素やその効果についてご説明しましょう。
2-1.アーモンド
アーモンドは他のナッツと輸入量を比較しても段違いに多く、日本で特に好まれているナッツだといえます。
チョコレートでコーティングされたものや、いったり揚げたりしてそのままつまめるもの、砕いてお菓子などに入っているものなど、日常生活を送る上でもよく目にしますよね。
2-1-1.アーモンドに含まれる栄養素
アーモンドにはたんぱく質と食物繊維が豊富に含まれています。
たんぱく質は炭水化物・脂質と並びヒトの体のエネルギー源になる栄養素です。
筋肉・臓器・皮膚・毛髪などの体の組織、ホルモン・酵素・抗体などの体内ではたらく成分を構成しているため生命維持にたんぱく質は欠かせません。
食物繊維には、よく知られているおなかの調子を整える作用の他、脂質・糖質・ナトリウム(食塩)を吸着して体の外に排出するはたらきがあるため、肥満や生活習慣病の予防・改善効果が期待できます。
また、アーモンドは食品のなかでもビタミンEを豊富に含んでいます。
ビタミンEには「抗酸化作用」といって老化、免疫機能の低下、がんや動脈硬化などの原因となる物質のはたらきを防ぐ効果があります。
【関連情報】 「アーモンド」についてもっと知りたい方はこちら
2-2.くるみ
くるみは紀元前7,000年ごろから食用されてきた「最古のナッツ」です。
独特のほろ苦い味わいが癖になりますよね。
パンや焼き菓子によく使われています。
2-2-1.くるみに含まれる栄養素
くるみは他のナッツ類と比較しても、多価不飽和脂肪酸をたっぷりと含んでいるのが特徴です。
多価不飽和脂肪酸は体内で合成できず、食事から摂取しなくてはならない「必須脂肪酸」です。
また多価不飽和脂肪酸は、増え過ぎると肥満や心筋梗塞などを招く「中性脂肪」を下げる作用を持つとされています。
2-3.カシューナッツ
独特の形が印象的なカシューナッツは、「カシューアップル」と呼ばれる果実の先端にぶら下がっている堅い殻に覆われた種子の中身です。
種子が果実の外にある珍しい植物です。
2-3-1.カシューナッツに含まれる栄養素
カシューナッツはナッツ類のなかでは脂質の含有量が少なく、カロリーが低いのが特徴です。
また、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅などのミネラルをたっぷりと含んでいます。
体を構成する重要な物質であるミネラルは、体内で合成することができないため食事から摂らなくてはならない栄養素です。
マグネシウムは、リンやカルシウムといったミネラルと共に骨を形成する他、体内のさまざまな代謝を助ける機能を持つといわれています。
また鉄は不足すると貧血になるため、特に妊産婦や月経のある女性にとっては重要な栄養素です。
ミネラルは互いに吸収やはたらきに影響を与え合うためバランス良く摂取することが推奨されています。
2-4.マカダミアナッツ
マカダミアナッツは1857年に発見された人類にとってはまだ新しいナッツです。
日本ではお菓子の材料として人気を集めており年々消費量が増大しています。
他のナッツよりも生産量が少なく希少なためやや高価なのがデメリットですが、上品で淡泊な甘みと軽い口当たりは他のナッツにはない特徴です。
チョコレートやアイスとの相性も抜群ですよね。
またマカダミアナッツから抽出された油は酸化しにくくヒトの皮脂に組成が似ているため、化粧品やスキンケア製品の材料にもされています。
2-4-1.マカダミアナッツに含まれる栄養素
マカダミアナッツは他のナッツと比べても脂質の含有量が多く、可食部のうち70%以上を脂質が占めています[3]。
その分、カロリーは高めです。
しかし脂質の多くはオレイン酸をはじめとした一価不飽和脂肪酸です。
[3]文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2-5.ピスタチオ
お菓子やアイスクリームの材料として利用される他、スナックとしても人気のピスタチオには「ナッツの女王」という通称もあり、日本でも年々消費量が増えています。
緑色が濃く鮮やかなものほど高級品です。
2-5-1.ピスタチオに含まれる栄養素
ピスタチオにはビタミンB6が豊富に含まれています。
ビタミンB6は健康な皮膚や髪、歯をつくり、成長を促進するといわれており、不足すると皮膚炎や口角炎、舌炎など皮膚や粘膜に悪い影響を及ぼしたり、貧血になったりしてしまいます。
健康のためにはしっかり摂取しておきたい栄養素ですね。
またピスタチオは他のナッツ類と比較するとミネラルの一種カリウムを多く含んでいます。
カリウムは血圧を下げる作用があるといわれています。
カリウムにはナトリウムの排せつを促す作用があり、食塩を摂り過ぎる傾向にある日本人には特に重要な栄養素だと考えられています。
またカリウムは、神経や筋肉の伝達に関与しており、健康には欠かせない栄養素だといえますね。
2-6.ヘーゼルナッツ
ヘーゼルナッツは独特の風味と食感が特徴で、アーモンド・カシューナッツと並んで「世界三大ナッツ」の一つといわれています。
そのまま食べる機会はあまりないかもしれませんが、よくいったヘーゼルナッツを砕いてカラメルソースと混ぜペースト状にした「プラリネ」はチョコレートやアイス、ケーキの材料としてよく知られています。
濃厚で香ばしい風味が癖になりますよね。
2-6-1.ヘーゼルナッツに含まれる栄養素
ヘーゼルナッツにはカリウムや鉄、銅などのミネラルが豊富に含まれています。
カリウムにはナトリウムの排出を促し、血圧を下げるはたらきがあるといわれています。
鉄が貧血予防になることは皆さんご存じですよね。
また銅は体内でのエネルギー生成に関わっています。
さらにヘーゼルナッツにはビタミンB群の仲間であるパントテン酸や葉酸も多く含まれています。
パントテン酸には皮膚や粘膜の健康を維持するはたらき、葉酸には口内炎や貧血を防ぎ病気に対する抵抗力を高めるはたらきがあるといわれています。
2-7.ピーカンナッツ(ぺカンナッツ)
「ピーカンナッツって何?」
と思われた方も多いかもしれません。
ピーカンナッツは「ペカンナッツ」とも呼ばれるアメリカ原産のクルミ科の木になるナッツで、アメリカではピーカンナッツを上にぎっしりと載せた「ピーカンパイ」がいわばおふくろの味です。
アメリカ大陸が発見されるより前から先住民の貴重な栄養源とされてきました。
食感はくるみに似ていますが、苦みの少ないまろやかな味わいが特徴です。
2-7-1.ピーカンナッツ(ぺカンナッツ)に含まれる栄養素
ピーカンナッツはナッツのなかでもマカダミアナッツに次いで高カロリーで、70%程度が脂質によって構成されています[4]。
しかし脂質のうち飽和脂肪酸はわずか10%程度で、残りは一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸が占めています[4]。
カロリーが高めなので食べ過ぎには注意が必要ですが、気になる方は機会があればぜひ食べてみてください。
[4]文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2-8.ブラジルナッツ
ブラジルナッツも、名前を聞いたことがないという方が多いかもしれません。
ブラジルナッツはブラジルやベネズエラなどの熱帯雨林にだけ生息する木から収穫されるナッツで、日本ではあまり見かける機会はありません。
マカダミアナッツのような食感で、バターのような濃厚な風味が特徴です。
ブラジルナッツは非常に大きなナッツでアーモンドの2倍近くもあります。
2-8-1.ブラジルナッツに含まれる栄養素
ブラジルナッツにはさまざまなミネラルがバランス良く含まれています。
また糖質から体のエネルギーを取り出すのに必要なビタミンB1を豊富に含むのも特徴の一つです。
美容や健康にぴったりの食材だといえるので、機会があればぜひ手に取って食べてみてくださいね。
2-9.ココナッツ
ココナッツは「ココヤシ」という植物の実で、ナッツの仲間として扱われているのは果肉を乾燥させたものです。
ココヤシの実は用途が非常に幅広く、未成熟の果実に含まれる透明な液体は「ココナッツウォーター」、身を搾って作られる乳白色の液体は「ココナッツミルク」として飲んだり料理の材料として使ったりされています。
またナタデココはココナッツウォーターを酢酸菌で培養して作られるものです。
2-9-1.ココナッツに含まれる栄養素
ココナッツの果肉にはカリウムが豊富に含まれています。
カリウムにはナトリウムの排出を促して血圧を下げたり、筋肉のはたらきを良くしたりする作用があるといわれています。
ただしココナッツに含まれている脂質の多くはナッツ類にしては珍しく、肥満の原因となったり血中の悪玉コレステロールを増やして心筋梗塞などの循環器系の病気を招いたりする飽和脂肪酸です。
摂り過ぎには十分注意してくださいね。
2-10.ピーナッツ
日本でらっかせいとも呼ばれるピーナッツは1章でご紹介したとおり、ナッツと違い植物学的には豆の仲間です。
乾燥させたものをいって食べるのが一般的ですが、生の豆をゆでたり蒸したり、調理して食べることもできますよ。
2-10-1.ピーナッツに含まれる栄養素
ピーナッツは他のナッツに比べると脂質が少なくたんぱく質が豊富です。
またピーナッツにはカリウムやビタミンE、ナイアシン、食物繊維などの栄養素がたくさん含まれています。
カリウムはミネラルの一種で、ナトリウムの排出を促して血圧を下げるはたらきがあるとされています。
ビタミンEには「抗酸化作用」といってシミやしわの要因をつくる物質のはたらきを抑える力があるといわれています。
食物繊維にはおなかの調子を整える作用だけでなく、脂質や糖質、ナトリウムを体外に排出するはたらきもあります。
また、ナイアシンには、皮膚や粘膜の健康維持を助ける作用があります。
【関連情報】 「食物繊維を含む食べ物」についてもっと知りたい方はこちら
3.ナッツについてのまとめ
一般的にナッツと呼ばれる食品には植物学的には同じ仲間ではないものも含まれています。
ナッツはカロリーが高めのため、太りやすい食べ物というイメージをお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
実際ナッツは脂質が多い傾向があり、カロリーは決して低いとはいえません。
しかしナッツの脂質は、肥満や不健康に直結するものばかりではありません。
むしろナッツの多くには体に良い作用を持つ一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸がたっぷりと含まれています。
度を越して食べ過ぎてしまわない限り、体への悪い影響は他の脂っこい食べ物などよりは小さいと考えられるでしょう。
その他にも、ナッツの多くはたんぱく質や食物繊維、ミネラルやビタミンなど体に良いはたらきを持つ栄養素を豊富に含んでいます。
ナッツにはさまざまなものがあるので、栄養価や味を比較してお好みのものを楽しんでくださいね。