「牡蠣にはどんな栄養が含まれているんだろう?」
牡蠣は生で食べる他にも、鍋やフライなど幅広い調理法でおいしく食べられる食品です。
牡蠣にはたんぱく質やビタミン、ミネラルなどさまざまな栄養素が豊富に含まれており、「海のミルク」とも呼ばれています。
この記事では牡蠣に含まれる栄養素とそのはたらきについて解説します。
牡蠣の選び方や下ごしらえのポイント、食べる際の注意点についてもご紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。
1.牡蠣の基礎知識
牡蠣はウグイスガイ目イタボガキ科とベッコウガキ科に属する二枚貝の総称です。
世界には約200種類の牡蠣があるといわれています[1]。
日本で食用として出回っている牡蠣はほとんどが養殖された「マガキ」で、その他に「イワガキ」や「スミノエガキ」「イタボガキ」があります。
養殖牡蠣の年間生産量は広島県が最も多く、次いで宮城県、岡山県となっています。
牡蠣の可食部100g当たりのカロリーは58kcalです[2]。
[1] 農林水産省「 特集2 カキ」
[2] 農林水産省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2.牡蠣に豊富に含まれる栄養素とそのはたらき
「牡蠣は健康に良いイメージがあるけど、どんな栄養素が含まれているのかな?」
牡蠣は栄養価が高い食品だと聞いたことはあっても、実際はどんな栄養素が含まれているのか知らないという方も多いのではないでしょうか。
牡蠣には以下のようにたんぱく質やビタミン、ミネラルが豊富に含まれています。
栄養素 | 含有量 |
---|---|
たんぱく質 | 6.9g |
ビタミンE | 1.3mg |
ビタミンB1 | 0.07mg |
ビタミンB2 | 0.14mg |
ナイアシン | 2.6mg |
ビタミンB12 | 23.0μg |
葉酸 | 39μg |
パントテン酸 | 0.54mg |
ビオチン | 4.8μg |
カリウム | 190mg |
カルシウム | 84mg |
マグネシウム | 65mg |
鉄 | 2.1mg |
亜鉛 | 14.0mg |
銅 | 1.04mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
この章では牡蠣に豊富に含まれる栄養素のはたらきや、1日当たりの摂取基準を解説します。
また各項では成人男女の食事摂取基準もご紹介しています。
摂取量の参考にしてくださいね。
18歳未満の方は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の「乳児・小児の食事摂取基準」をご確認ください。
また妊娠中・授乳中の方は「妊婦・授乳婦の食事摂取基準」をご確認ください。
[3] 東京都保健医療局「栄養成分表示ハンドブック」
[4] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
2-1.たんぱく質
牡蠣にはたんぱく質が豊富に含まれます。
牡蠣100g当たりのたんぱく質含有量は6.9gです[5]。
たんぱく質は炭水化物(糖質)や脂質と共に体のエネルギー源となる栄養素で、まとめて「エネルギー産生栄養素」と呼ばれています。
また筋肉や内臓、皮膚、髪の毛など体の組織をつくる材料となります。
体の機能を調整するホルモンや酵素、抗体などもたんぱく質から構成されているため、生命を維持するために欠かせない栄養素だといえるでしょう。
たんぱく質は20種類のアミノ酸から構成されています[7]。
たんぱく質の1日当たりの摂取推奨量は18〜64歳の男性で65g、65歳以上の男性で60g、18歳以上の女性で50gです[9]。
牡蠣を含むさまざまな食品からたんぱく質をしっかりと摂取しておきましょう。
たんぱく質についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
たんぱく質は1日どれくらい必要?効率良く摂取できるおすすめの食品
たんぱく質を豊富に含む食べ物は?良質なたんぱく質の摂取源を紹介
[5] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[6] 公益財団法人 長寿科学振興財団「 酵素の働きと健康効果」
[7] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 たんぱく質」
[8] 厚生労働省 e-ヘルスネット「 アミノ酸」
[9] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2-2.ビタミンE
牡蠣はビタミンEも多く含んでいます。
牡蠣100g当たりのビタミンE含有量は1.3mgです[10]。
ビタミンEは脂溶性ビタミンの一種です。
ビタミンEは活性酸素のはたらきを抑える抗酸化作用を持った「抗酸化ビタミン」の一種です。
ビタミンEは自らが酸化されることで脂質の酸化を防ぎ、細胞の健康維持を助けます。
ビタミンEの1日当たりの摂取目安量は、男性の場合18~64歳で6.5mg、65~74歳で7.5mg、75歳以上で7.0mgです[11]。
女性の場合18~29歳で5.0mg、30~64歳で6.0mg、65~74歳で7.0mg、75歳以上で6.0mgです[11]。
牡蠣などビタミンEを豊富に含む食品を積極的に摂取しましょう。
[10] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[11] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
【関連情報】 「ビタミンEとは?はたらきや摂取目安量、摂取源となる食べ物を紹介」についてもっと知りたい方はこちら
2-3.ビタミンB1
牡蠣はビタミンB1を豊富に含んでいます。
牡蠣100g当たりのビタミンB1含有量は0.07mgです[12]。
ビタミンB1はビタミンB群の一種で、糖質の代謝に欠かせないはたらきをします。
このため、糖質やアルコールの摂取が多い方はビタミンB1の必要量が増えます。
ビタミンB1が不足すると、糖質を主なエネルギー源とする脳や神経に悪影響を及ぼすため注意が必要です。
またビタミンB1には皮膚や粘膜の健康維持を助けるはたらきもあります。
ビタミンB1の1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~29歳で1.1mg、30~49歳で1.2mg、50~64歳で1.1mg、65歳以上で1.0mgです[13]。
女性の場合18~29歳で0.8mg、30~49歳で0.9mg、50~74歳で0.8mg、75歳以上で0.7mgです[13]。
[12] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[13] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2-4.ビタミンB2
ビタミンB2は牡蠣に豊富に含まれる栄養素の一つです。
牡蠣100g当たりのビタミンB2含有量は0.14mgです[14]。
ビタミンB2は水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB群に含まれます。
ビタミンB2は糖質や脂質、たんぱく質の代謝に関わっており、特に脂質の代謝の際に重要な役割を果たします。
このため脂っこい食事を好む方やダイエット中の方は意識的に摂取したい栄養素といえるでしょう。
またビタミンB2には成長の促進や、皮膚や粘膜の保護といったはたらきもあります。
ビタミンB2の1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~29歳で1.6mg、30~49歳で1.7mg、50~64歳で1.6mg、65歳以上で1.4mgです[15]。
女性の場合18~64歳で1.2mg、65歳以上で1.1mgです[15]。
ビタミンB2は単独で不足することはあまりなく、他のビタミンB群の不足とともに欠乏症が起こります。
ビタミンB2をはじめとするビタミンB群が不足しないように、バランスの良い食事を心掛けましょう。
ビタミンB群について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンB群にはどんなものがある?効果や含まれる食品を徹底解説!
[14] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[15] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
【関連情報】 「ビタミンB2とは?はたらきや食事摂取基準、摂取源となる食品を紹介」についてもっと知りたい方はこちら
2-5.ナイアシン
牡蠣にはナイアシンも豊富に含まれています。
牡蠣100g当たりのナイアシン含有量はナイアシン当量で2.6mgです[16]。
ナイアシンはビタミンB群の一種です。
ナイアシンは酵素の成分として体内のさまざまな反応に関わっています。
糖質、脂質、たんぱく質からエネルギーをつくり出すはたらきや、DNAの修復や合成などにおいて重要な役割を果たします。
また皮膚や粘膜の健康維持を助けることが分かっています。
アルコール代謝にも関わっているため、お酒を飲む方は意識的に摂取すると良いでしょう。
ナイアシンの1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~29歳で15mgNE、30~49歳で16mgNE、50~64歳で15mgNE、65~74歳で14mgNE、75歳以上で13mgNEです[17]。
女性の場合18~29歳で11mgNE、30~49歳で12mgNE、50~74歳で11mgNE、75歳以上で10mgNEです[17]。
ナイアシンについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ナイアシンはどんなビタミン?はたらきや食事摂取基準、摂取源を紹介
[16] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[17] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2-6.ビタミンB12
牡蠣はビタミンB群の一種であるビタミンB12を豊富に含みます。
牡蠣100g当たりのビタミンB12含有量は23.0μgです[18]。
ビタミンB12と呼ばれる物質は数種類ありますが、その一部はアミノ酸や脂質の代謝に関わっています。
またビタミンB12は細胞の増殖に関与するといわれています。
その他、ビタミンB12は同じビタミンB群の葉酸と共に赤血球の細胞の形を維持しています。
このため不足すると「巨赤芽球性貧血」と呼ばれる貧血に陥り、動悸(どうき)や息切れ、疲労感といった症状が現れます。
ビタミンB12の1日当たりの摂取目安量は、男女共に18歳以上で4.0μgです[19]。
不足しないようにしっかり摂りたい栄養素の一つですね。
ビタミンB12についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンB12を含む食べ物は?過不足の影響と食事摂取基準も解説
ビタミンB12が不足する原因とよくある症状は?摂取しやすい食品も紹介
[18] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[19] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2-7.葉酸
牡蠣にはビタミンB群の一種である葉酸が豊富に含まれます。
牡蠣100g当たりの葉酸含有量は39μgです[20]。
葉酸はDNAやRNAの合成に関わるビタミンです。
またアミノ酸の代謝、たんぱく質の合成にも関与し、細胞の増殖において重要なはたらきをするといわれています。
葉酸は赤血球の形成にも関わるため、不足すると巨赤芽球性貧血の原因となります。
さらに妊娠初期の女性において葉酸が不足すると、胎児の「神経管閉鎖障害」の発症率が高まることが分かっています。
葉酸の1日当たりの摂取推奨量は、18歳以上の男女共に240μgです[21]。
なお、妊娠計画中の女性や妊娠初期の女性は神経管閉鎖障害のリスクを下げるため、葉酸を通常の食べ物からの摂取に加えてサプリメントなどから1日当たり400μg摂取することが望ましいとされています。
牡蠣などからしっかりと葉酸を摂取しておきましょう。
葉酸についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
葉酸が多く含まれている食べ物とは?効果や摂取基準もあわせて解説
[20] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[21] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2-8.パントテン酸
牡蠣にはパントテン酸が豊富に含まれています。
牡蠣100g当たりのパントテン酸含有量は0.54mgです[22]。
パントテン酸はビタミンB群の一種で、エネルギーを生み出すはたらきや、糖および脂質の代謝に深く関わっています。
このためパントテン酸が欠乏するとエネルギー代謝に異常を来します。
またパントテン酸は抗体の合成に関わったり、皮膚や粘膜の健康状態を保ったりもしているといわれています。
パントテン酸の名前は「至る所に存在する酸」という意味のギリシャ語に由来し、さまざまな食品に含まれているため不足する心配はほとんどありません。
パントテン酸の1日当たりの摂取目安量は、男性の場合18歳以上で6mg、女性の場合18歳以上で5mgです[23]。
パントテン酸についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
パントテン酸とは?はたらきや摂取目安量、摂取源となる食品を紹介
[22] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[23] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2-9.ビオチン
牡蠣にはビオチンも豊富に含まれます。
牡蠣100g当たりのビオチン含有量は4.8μgです[24]。
ビオチンはビタミンB群の一種で、糖質、脂質、たんぱく質を代謝してエネルギーを生み出すはたらきに関わっています。
また抗炎症物質を生成してアレルギー症状を和らげたり、皮膚や粘膜、髪の毛などの健康を維持したりといったはたらきもあります。
ビオチンの1日当たりの摂取目安量は、18歳以上の男女共に50μgです[25]。
ビオチンはさまざまな食品に含まれているため、通常の食生活を送っていれば欠乏症の心配はありません。
ビオチンについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビオチンとは?はたらきや摂取の目安量、摂取源となる食品を解説
[24] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[25] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2-10.カリウム
牡蠣には100g当たり190mgとカリウムが豊富に含まれています[26]。
カリウムは「必須ミネラル」の一種で、そのほとんどが体の細胞内に存在しています。
カリウムは主に細胞内液の浸透圧を調節します。
また神経の興奮や筋肉の収縮、pHバランスの調節などにも関わっています。
カリウムにはナトリウムを体外に出しやすくするはたらきもあるため、塩分の摂取が多い日本人にとって、特に重要な栄養素といえるでしょう。
厚生労働省はカリウムの目標量を設定しています。
カリウムの1日当たりの摂取目標量は、18歳以上の男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上です[28]。
牡蠣などカリウムを豊富に含む食べ物を摂取しましょう。
カリウムを豊富に含む食べ物については以下の記事でご紹介しています。
カリウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を紹介
[26] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[27] 国立研究開発法人国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識」
[28] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2-11.カルシウム
牡蠣はカルシウムを豊富に含みます。
牡蠣100g当たりのカルシウム含有量は84mgです[29]。
カルシウムは必須ミネラルの一種です。
ヒトの体内で最も多いミネラルであり、そのほとんどが骨や歯を構成しています。
またその他のカルシウムは筋肉や神経、血液中に存在しており、筋肉の興奮性を抑えたり、血液の凝固を促して出血を予防したりといったはたらきもあります。
カルシウムが不足すると骨がもろくなり骨折しやすくなる骨粗しょう症や高血圧などを引き起こす恐れがあります。
カルシウムの1日当たりの摂取推奨量は、男性は18~29歳で800mg、30歳以上で750mgです[30]。
女性では18~74歳で650mg、75歳以上で600mgです[30]。
日本人はカルシウムが不足しがちな食生活を送っているため、牡蠣などからしっかりと摂取するよう心掛けましょう。
カルシウムについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
カルシウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を解説
[29] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[30] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2-12.マグネシウム
牡蠣はマグネシウムも多く含みます。
牡蠣100g当たりのマグネシウム含有量は65mgです[31]。
マグネシウムは必須ミネラルの一種で、多くの酵素が関わる反応に関与しています。
たんぱく質の合成や筋肉・神経の機能、血糖や血圧の調整など幅広いはたらきに関係し、ほぼ全ての代謝に必要だといわれています。
さらにカルシウムなどと共に骨をつくるはたらきもあります。
マグネシウムの1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~29歳で340mg、30~49歳で380mg、50~64歳で370mg、65~74歳で350mg、75歳以上で330mgです[32]。
女性の場合18~29歳で280mg、30~64歳で290mg、65~74歳で280mg、75歳以上で270mgです[32]。
マグネシウムについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
マグネシウムとは?はたらきや食事摂取基準、摂取源となる食品を解説
[31] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[32] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2-13.鉄
牡蠣には鉄も豊富に含まれています。
牡蠣100g当たりの鉄含有量は2.1mgです[33]。
鉄は必須ミネラルの一種で、赤血球の「ヘモグロビン」や筋肉中の「ミオグロビン」を構成し全身に酸素を供給するはたらきをしています。
鉄が不足するとヘモグロビンがつくれなくなるために酸素が全身へ運ばれにくくなり、集中力の低下や頭痛、食欲不振といった鉄欠乏性貧血の症状を引き起こします。
また鉄は体の成長や神経の発達、細胞の機能に関わったり、一部のホルモンを合成したりしています。
鉄の1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~29歳で7.0mg、30~49歳で7.5mg、50~74歳で7.0mg、75歳以上で6.5mgです[34]。
女性の場合、月経の有無で推奨量が異なります。
月経がある場合、18~29歳で10.0mg、30~64歳で10.5mgです[34]。
月経がない場合は18~74歳で6.0mg、75歳以上で5.5mgです[34]。
月経のある方や妊娠中、授乳中の方は鉄が不足しやすいため、牡蠣などからしっかり鉄を摂取しておきましょう。
鉄を豊富に含む食べ物については以下の記事でご紹介しています。
鉄分が多く含まれる食べ物と効果的な摂り方は?貧血気味の方必見!
[33] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[34] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2-14.亜鉛
牡蠣には亜鉛も豊富に含まれています。
牡蠣100g当たりの亜鉛含有量は14.0mgです[35]。
亜鉛は必須ミネラルの一種で、多くの酵素に欠かせない成分です。
たんぱく質の合成や遺伝子の発現に深く関わり、細胞の成長や分化においても中心的な役割を担います。
さらに免疫機能や生殖機能、皮膚、味覚などを健康に保つはたらきもあります。
亜鉛不足は食欲不振や皮膚炎、味覚障害の原因となります。
亜鉛の1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~29歳で9.0mg、30~64歳で9.5mg、65歳以上で9.0mgです[36]。
女性の場合18~29歳で7.5mg、30~64歳で8.0mg、65~74歳で7.5mg、75歳以上で7.0mgです[36]。
なお、体に必要な栄養素である亜鉛ですが、摂り過ぎると体に悪影響を及ぼします。
牡蠣には非常に多くの亜鉛が含まれるため食べ過ぎには要注意です。
牡蠣の食べ過ぎによる亜鉛の過剰摂取については第5章で解説します。
亜鉛についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
亜鉛のはたらきと1日の適切な摂取量とは?亜鉛を多く含む食品も紹介
[35] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[36] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
2-15.銅
牡蠣には銅も豊富に含まれています。
牡蠣100g当たりの銅含有量は1.04mgです[37]。
銅は必須ミネラルの一種で、主に骨や筋肉、血液に存在します。
銅は鉄と共に血をつくるはたらきに関与する他、神経伝達物質の代謝や活性酸素の除去などに関わっています。
また酵素の成分として体内の幅広い反応に関わり、骨の形成にも関与します。
銅の1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~29歳で0.8mg、30~64歳で0.9mg、65歳以上で0.8mgです[38]。
女性の場合18歳以上で0.7mgです[38]。
銅は通常の食生活を送っていれば欠乏する心配はないといわれていますが、牡蠣などさまざまな食品から摂取しておきましょう。
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所が「「健康食品」の安全性・有効性情報」というサイトで銅の情報を公開しているので、参考にしてみてくださいね。
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 「健康食品」の安全性・有効性情報
[37] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[38] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
3.牡蠣に含まれる栄養素とそのはたらき
牡蠣には豊富とまではいえないものの、ビタミンAやビタミンB6などの栄養素が含まれています。
栄養素 | 含有量 |
---|---|
ビタミンA | 24μg |
ビタミンB6 | 0.07mg |
ビタミンC | 3mg |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
この章では牡蠣に含まれる栄養素のはたらきや、1日当たりの摂取基準を解説します。
[39] 東京都保健医療局「栄養成分表示ハンドブック」
3-1.ビタミンA
牡蠣にはビタミンAが含まれます。
牡蠣100g当たりのビタミンA含有量は24μgです[40]。
脂溶性ビタミンの一つであるビタミンAはレチノールとも呼ばれ、体内ではレチノール、レチナール、レチノイン酸という3種類の形で作用しています。
またビタミンAとして作用する物質はレチノールとして食品に含まれるもの以外に、体内でビタミンAとしてはたらく物質に変換される「プロビタミンA」があります。
このため食品のビタミンA含有量や食事摂取基準は、レチノールの含有量とプロビタミンAから変換されるビタミンAを合わせた「レチノール活性当量(μgRAE)」という単位で表されています。
ビタミンAは活性酸素のはたらきを抑える抗酸化ビタミンの一種です。
またビタミンAには目の機能を正常に保ったり、皮膚や粘膜を正常に保持したりといったはたらきがあります。
このためビタミンAが不足すると皮膚や粘膜の乾燥につながる他、夜盲症をもたらす可能性があります。
ビタミンAの1日当たりの摂取推奨量は男性の場合18~29歳で850μgRAE、30~64歳で900μgRAE、65~74歳で850μgRAE、75歳以上で800μgRAEです[41]。
女性の場合18~29歳で650μgRAE、30~74歳で700μgRAE、75歳以上で650μgRAEです[41]。
ビタミンAについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンAにはどんな効果がある?目標摂取量とおすすめの食品を紹介
[40] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[41] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
3-2.ビタミンB6
牡蠣はビタミンB6を含んでいます。
牡蠣100g当たりのビタミンB6含有量は0.07mgです[42]。
ビタミンB6はビタミンB群の一種で、糖質や脂質、たんぱく質の代謝に深く関わります。
またこの他にもさまざまな代謝に関与する栄養素です。
特にたんぱく質の代謝において重要なはたらきをしており、筋トレなどのためにたんぱく質を多く摂取している場合は必要量が増加します。
この他にも正常な免疫機能の維持などに関わっています。
皮膚や粘膜の健康を保つはたらきもあるといわれていますよ。
ビタミンB6の1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~64歳で1.5mg、65歳以上で1.4mgです[43]。
女性の場合18歳以上で1.2mgです[43]。
ビタミンB6の不足は他のビタミンの不足と同時に起こるといわれています。
牡蠣でビタミンB6をはじめさまざまなビタミンを摂取しておきましょう。
ビタミンB6についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
[42] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[43] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
3-3.ビタミンC
牡蠣にはビタミンCが含まれます。
牡蠣100g当たりのビタミンC含有量は3mgです[44]。
ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で、皮膚や腱(けん)、軟骨などを構成するたんぱく質の「コラーゲン」を生成するのに欠かせない栄養素です。
また皮膚のメラニン色素の生成を抑制し、シミやそばかすを防ぐはたらきもあります。
こうしたはたらきからビタミンCは肌に良いといわれるのですね。
他にもビタミンCには鉄の吸収を促す役割や、活性酸素を取り除く抗酸化物質としての役割があります。
ビタミンCが不足すると、倦怠(けんたい)感や気力低下といった症状が現れます。
重度の欠乏に至るとコラーゲンがつくれず血管がもろくなり、「壊血病」を発症する危険があるため注意が必要です。
ビタミンCの1日当たりの摂取推奨量は、男女共に18歳以上で100mgです[45]。
牡蠣の他にも、さまざまな食品からビタミンCを摂取しておきましょう。
ビタミンCを豊富に含む食べ物については以下の記事でご紹介しています。
ビタミンCはどんな食べ物に含まれるの?健康維持に必要な摂取量を解説
[44] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
[45] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
4.牡蠣に含まれる成分
牡蠣には栄養素の他に「タウリン」という成分も含まれています。
タウリンはいかやたこ、貝類などに含まれるアミノ酸に似た物質で、牡蠣の含有量はこれらのなかでも多いことが分かっています。
タウリンにはコレステロールを減少させる、心臓や肝臓の機能を高める、視力を回復させる、高血圧を予防するなど、さまざまな効果が期待できるといわれています。
栄養ドリンクの成分として聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。
タウリンは水溶性のため、牡蠣を鍋やシチューにして汁ごと食べることで効率良く摂取できますよ。
5.牡蠣をおいしく安全に食べるポイント
牡蠣をおいしく食べるにはいくつかのポイントがあります。
また牡蠣には食中毒や亜鉛中毒の原因となる恐れがあるため、安全に食べるために注意すべき点もあります。
ここでは、牡蠣をおいしく、安全に楽しむためのポイントをお伝えしましょう。
ポイント1 つやがありふっくらしたものを選ぶ
殻付きの牡蠣の場合、殻がしっかり閉じていて重いものを選びましょう。
またむき牡蠣の場合は身につやがありふっくらとしていて、縁の黒い部分がくっきりと濃いものがおすすめです。
新鮮な牡蠣は身の色がやや黄色みがかっているので、選ぶ際に注目してみてくださいね。
ポイント2 塩と片栗粉で汚れを落とす
牡蠣をおいしく食べるためには、下ごしらえも大切なポイントです。
ボウルに牡蠣の身を入れ、塩と片栗粉を加えて軽くもみ洗いすると汚れやぬめりが取れます。
その後、塩水ですすぎ、キッチンペーパーで優しく水気を拭き取りましょう。
[46] 農林水産省「 カキの生態の世界的権威に聞いた カキの不思議」
ポイント3 加熱用の牡蠣は十分に加熱する
加熱用の牡蠣にはノロウイルスが蓄積している恐れがあり、食中毒の原因になり得ます。
十分加熱して食べるようにしましょう。
ノロウイルスは腹痛や嘔吐(おうと)、激しい下痢などを引き起こすウイルスです。
牡蠣などの二枚貝やノロウイルスに感染した人の手が触れたもの、便、嘔吐物などから感染します。
本来二枚貝にはノロウイルスは生息しておらず、体内で増殖することもありません。
しかしノロウイルスに感染した人間の排せつ物にいたウイルスは下水処理場でも完全には死滅せず、一部が河川から海へ流れ込んでしまうことがあります。
このため特定の海域に生息する牡蠣は餌と共に海水を体内に取り込む過程でノロウイルスも取り込んでしまっている恐れがあるのです。
牡蠣には生食用と加熱用がありますが、これは生息する海域の水が細菌やウイルスの基準をクリアしているかどうかの違いによります。
基準をクリアしている海域で育った牡蠣であれば、生で食べても食中毒の心配が少ないと考えられるため、生食用として販売されているのです。
一方、加熱用の牡蠣はノロウイルスが体内にたまっている恐れがあるので、鮮度にかかわらずしっかりと加熱することが必要です。
牡蠣の中心部が80〜90℃の状態で90秒以上加熱すれば、ノロウイルスの感染性はなくなるとされています[47]。
また加熱用の牡蠣に触れた手や調理器具で他の食品に触れないようにも注意してくださいね。
[47] 農林水産省「 ノロウイルス(ウイルス) [Norovirus]」
ポイント4 ビタミンCを含む食材と一緒に摂取する
ビタミンCは牡蠣に豊富に含まれる鉄や亜鉛の吸収率を高めます。
生牡蠣ならビタミンCを多く含むレモンやすだちを搾って食べるのがおすすめです。
またブロッコリーやほうれん草、じゃがいももビタミンCが豊富なので、牡蠣をグラタンなどにして味わうのも良いでしょう。
【関連情報】 「ビタミンCはどんな食べ物に含まれるの?健康維持に必要な摂取量を解説」についてもっと知りたい方はこちら
ポイント5 食べ過ぎない
牡蠣には亜鉛が多く含まれているので、食べ過ぎには注意が必要です。
通常の食生活を送っていれば亜鉛の過剰摂取による不調が問題になることはまれですが、急性亜鉛中毒では吐き気や目まい、胃障害といった症状が現れます。
また継続的な過剰摂取では鉄や銅の吸収が阻害され貧血や免疫障害、下痢、神経症状などが起こる恐れがあります。
成人の亜鉛の1日当たりの耐容上限量は、男性の場合18〜29歳で40mg、30〜74歳で45mg、75歳以上で40mgです[48]。
女性の場合35mgです[48]。
牡蠣100gには亜鉛が14.0mg含まれています[49]。
亜鉛の含有量を考慮すると、一度に牡蠣を食べる量は数個程度にとどめるのが良いでしょう。
[48] 厚生労働省「 日本人の食事摂取基準(2025年版)」
[49] 文部科学省「 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
6.牡蠣に含まれる栄養素についてのまとめ
日本で食用として出回っている牡蠣のほとんどは「マガキ」と呼ばれる品種です。
牡蠣にはさまざまな栄養素が含まれています。
牡蠣は体の材料となるたんぱく質や抗酸化作用のあるビタミンE、その他7種類のビタミンB群が豊富です。
また不足しがちなカリウム、鉄、亜鉛といったミネラルも多く含みます。
さらに牡蠣からはビタミンAやビタミンB6、ビタミンCも摂取できます。
栄養ドリンクの成分として知られるタウリンが含まれている点も魅力的ですよね。
牡蠣を選ぶ際は、殻がしっかり閉じているものか、身につやがありふっくらしているものを選びましょう。
また加熱用の牡蠣は絶対に生で食べず、十分に加熱する必要があります。
ビタミンCを含む食品と一緒に食べることで、牡蠣に含まれる鉄や亜鉛の吸収率が高まりますよ。
ただし亜鉛の過剰摂取には注意しておきましょう。
この記事を参考に、多くの栄養素を豊富に含む牡蠣を日々の食事に取り入れてくださいね。