「亜鉛ってどんな効果があるの?」
「どんな食べ物に亜鉛が含まれているんだろう……」
亜鉛が私たちの体にとって必要な栄養素であることは知っていても、どのような効果があるのかまではよく分からないという方も多いかもしれませんね。
亜鉛は人間の健康維持に必須であるミネラルの一つで、味覚を正常に保ったり皮膚などの健康維持に関わったりする栄養素です。
そのため、亜鉛が不足してしまうと味覚障害や皮膚炎などの症状が起こることが知られています。
この記事では、亜鉛の効果や摂取目安量、含まれている食品などについて解説します。
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1.亜鉛に期待できる効果
私たちの体にとって重要な役割を持つ栄養素の一つが「ミネラル」です。
亜鉛はミネラルの一つで、現時点で人間の体に必要なことが明らかにされている「必須ミネラル」に分類されています。
多くの酵素の材料となる亜鉛は生体内のさまざまな代謝に関与し、細胞の成長や新しい細胞が作り出される組織などにおいて重要な役割を担っています。
ここでは、亜鉛が私たちにもたらす効果について詳しく見ていきましょう。
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1-1.味覚を正常に保つ
亜鉛に味覚を正常に保つ作用があることをご存じの方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。
舌の上皮細胞には亜鉛が豊富に存在しています。
特に多いのが味を感じる部分である舌表面の「味蕾(みらい)」と呼ばれる部分で、この中には味覚センサーのような役割を持つ「味細胞」があります。
味細胞はとても短いサイクルで生まれ変わっていて、この再生に必須とされている成分が亜鉛です。
亜鉛が十分に存在していなければ味細胞の生まれ変わりが追いつかず、味覚も不安定になってしまうと考えられます。
味覚の異常は亜鉛の不足だけが原因ではありませんが、正常な味覚を維持するためには亜鉛を十分に摂取することも重要であるといえるでしょう。
1-2.皮膚や粘膜の健康を保つ
亜鉛は皮膚などの構成成分であるたんぱく質の合成にも関わっています。
亜鉛は皮膚や毛髪に存在している成分でもあるため、亜鉛を十分に摂取することで皮膚の炎症やかゆみなどのトラブル、脱毛などの症状を回避できると考えられています。
また亜鉛は細胞の再生にも関わっているため、傷の治りを早めることにも役立つとされています。
一方、胃や腸など消化管粘膜の健康を保つ作用もあることから、亜鉛が不足すると食欲低下や下痢を引き起こすことが知られています。
1-3.体の成長・発育を助ける
亜鉛は子どもの成長にも深く関わっています。
成長ホルモンの分泌に関わる栄養素であるため、身長を伸ばすなど子どもの体を大きくすることに役立つと考えられています。
子どもの成長にとって重要な役割を担う栄養素の一つが亜鉛であるといえるでしょう。
1-4.貧血を改善する
赤血球の産生には亜鉛が必要不可欠です。
そのため、亜鉛を補うことで貧血が改善する場合があります。
鉄不足による「鉄欠乏性貧血」は主に赤血球中の色素「ヘモグロビン」の減少が原因で起こりますが、亜鉛不足による貧血は赤血球の増殖が妨げられ数が減少することで生じます。
貧血といえば鉄欠乏性貧血が良く知られていますが、鉄だけではなく亜鉛不足でも貧血が起こることが考えられるのですね。
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1-5.抗酸化酵素の構成成分となる
亜鉛は「活性酸素」から体を守る酵素の合成に関わる物質の一つです。
私たちの体には活性酸素から体を防御するための機能が備わっており、この機能に関与しているのが「抗酸化酵素」です。
抗酸化酵素の合成には亜鉛や銅、マンガンなどのミネラルが必要です。
老化や生活習慣病などの予防には、抗酸化酵素の合成に関与する亜鉛が重要な役割を果たしているといえるのではないでしょうか。
1-6.生殖機能を維持する
亜鉛は特に男性の生殖機能に影響を与えています。
性腺(精巣)の発達や機能に関与しているため、亜鉛が不足すると男性ホルモンの合成や分泌が低下したり男性不妊の原因になったりすることがあります。
また、前立腺に亜鉛が多く存在していることが分かっていますが、その機能については明らかにされていないようです。
1-7.免疫機能を維持する
亜鉛には免疫機能を活性化させるはたらきがあるといわれています。
ヒトには体内に侵入した細菌やウイルスなど(抗原)を攻撃したり排除したりする免疫機能というシステムが備わっています。
この免疫機能のためにはたらくのが「免疫細胞」と呼ばれる細胞です。
亜鉛は免疫の司令塔となる「ヘルパーT細胞」をはじめ、さまざまな免疫細胞のはたらきに関与しています。
このため亜鉛が不足すると免疫機能全体の活性が低下し、風邪や下痢などを引き起こす感染症にかかりやすくなるといわれています。
亜鉛を適切に摂取することで、免疫機能を正常に保ち細菌やウイルス感染から体を守ることにつながるのですね。
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2.亜鉛を適切に摂取できないとどうなる?
人体にとって重要なはたらきを持つ亜鉛を適切に摂取できなかった場合、健康にどのような影響があるのか気になってしまいますよね。
ここでは、亜鉛が不足したり摂り過ぎてしまったりした場合には、体にどのような影響があるのかについて詳しくご説明します。
2-1.亜鉛が不足した場合
亜鉛が不足した場合、皮膚炎や味覚障害、食欲低下や下痢、貧血などの症状が現れることがある他、小児では成長障害や性腺発育障害の可能性があることが知られています。
亜鉛が不足する原因は、食事からの摂取不足や病気などによる吸収障害、妊娠などによる必要量の増大などさまざまです。
また、亜鉛の排泄増加によっても不足することがあり、その原因として内服薬や病気の影響などが挙げられます。
特に激しいスポーツを行うアスリートに多い亜鉛欠乏性貧血は、汗や尿への亜鉛の排泄が増加すること起こると考えられています。
2-2.亜鉛を過剰摂取した場合
通常の食生活においては、亜鉛の過剰摂取が起こることはあまりありません。
しかし、サプリメントなどの利用により長期にわたって亜鉛を過剰摂取すると銅の吸収が阻害され、老化防止などにはたらく抗酸化酵素の活性低下が起こる場合があります。
また、鉄の吸収も阻害されるため貧血や胃の不快感などが生じる恐れもあります。
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3.亜鉛の食事摂取基準と平均摂取量
「亜鉛にはいろいろな効果が期待できるようだけど、どのくらい摂ったらいいのかな?」
「自分は亜鉛を十分に摂れているのかな……」
期待できる効果が多い分不足した場合の健康への影響も多岐にわたるため、亜鉛を十分に摂れているかどうか不安に感じる方も多いかもしれませんね。
じつは亜鉛は不足しがちなミネラルであるといわれているのです。
ここでは、亜鉛の摂取目安量や実際の平均摂取量について、厚生労働省「日本人の食事摂取基準」や「国民健康・栄養調査」の結果をもとにお伝えしていきます。
3-1.1日当たりの食事摂取基準
厚生労働省は1日当たりの亜鉛の食事摂取基準を以下のように定めています。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 耐容上限量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 耐容上限量 |
1〜2歳 | ||||||
3〜5歳 | ||||||
6〜7歳 | ||||||
8〜9歳 | ||||||
10〜11歳 | ||||||
12〜14歳 | ||||||
15〜17歳 | ||||||
18~29歳 | ||||||
30~64歳 | ||||||
65~74歳 | ||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
なお、1歳未満の乳児に対しては目安量が設定されています。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
月齢 | 目安量 | 目安量 |
0〜5カ月 | ||
6〜11カ月 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
通常の食生活で亜鉛を摂り過ぎる恐れはあまりありませんが、サプリメントなどの使用で過剰摂取に陥る場合があることから耐容上限量が設けられています。
また妊婦や授乳婦は亜鉛の必要量が増すため、以下のように付加量が設定されています。
推定平均必要量 | 推奨量 | |
---|---|---|
妊婦(中期・後期) | ||
授乳婦 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
3-2.1日当たりの平均摂取量
亜鉛の1日当たりの平均摂取量を、厚生労働省「国民健康・栄養調査」で見ていきましょう。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1~6歳 | ||
7~14歳 | ||
15~19歳 | ||
20歳~29歳 | ||
30歳~39歳 | ||
40歳~49歳 | ||
50歳~59歳 | ||
60歳~69歳 | ||
70歳~79歳 | ||
80歳以上 |