「カルシウムを摂取するにはどんなものを食べたら良いんだろう?」
カルシウムは骨の健康に大切だとご存じの方も多いでしょう。
体内のカルシウムの多くは骨や歯を構成する材料になる他、血液凝固や筋肉の収縮にも関わります。
カルシウムは体に吸収されにくい栄養素のため、吸収率の良いカルシウムを含む食品を選ぶことがおすすめです。
この記事ではカルシウムを多く含む食品や摂取する際のポイントをご紹介します。
カルシウムの過不足による影響や適切な摂取量、平均必要量も詳しく解説します。
骨の健康を維持したいという方はぜひ参考にしてくださいね。
1.カルシウムを含む食品
「カルシウムを含む食品にはどんなものがあるんだろう?」
カルシウムは乳製品の他にも、さまざまな食品に含まれています。
この章ではカルシウムを含む食品を乳製品、魚介類、豆類・大豆製品、野菜類、海藻類に分けて解説します。
[1] 東京都福祉保健局「栄養成分表示ハンドブック」
1-1.カルシウムを含む乳製品
カルシウムと聞くと、乳製品を思い浮かべる方も多いでしょう。
カルシウムを含む乳製品は以下のとおりです。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
パルメザンチーズ | ||
エメンタールチーズ | ||
チェダーチーズ | ||
ゴーダチーズ | ||
プロセスチーズ | ||
ブルーチーズ | ||
カマンベールチーズ | ||
リコッタチーズ | ||
モッツァレラチーズ | ||
マスカルポーネチーズ | ||
アイスクリーム(普通脂肪) | ||
加工乳(低脂肪) | ||
ヨーグルト(全脂無糖) | ||
普通牛乳 | ||
ヨーグルトドリンクタイプ |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
表中のチーズのうちマスカルポーネチーズ以外は100g当たりのカルシウムの含有量が豊富といえます[2]。
ただしバターやチーズなどには脂質も多く含まれているものがあるため、必要以上の摂取は控えるようにしてくださいね。
[2] 東京都福祉保健局「栄養成分表示ハンドブック」
1-2.カルシウムを含む魚介類
カルシウムは魚介類にも含まれています。
カルシウムを含む魚介類は以下のとおりです。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
かたくちいわし | ||
さくらえび | ||
ふな甘露煮 | ||
どじょう | ||
たたみいわし | ||
まあじ(小型、骨付き) | ||
さくらえび | ||
しらす干し | ||
いかなご | ||
わかさぎ | ||
いわし油漬缶詰(オイルサーディン) | ||
からふとししゃも | ||
ししゃも | ||
いわし水煮缶詰 | ||
桜でんぶ | ||
しらす干し | ||
さんま味付け缶詰 | ||
天然あゆ | ||
あさりつくだ煮 | ||
さば水煮缶詰 | ||
養殖あゆ | ||
さんまかば焼き缶詰 | ||
しじみ | ||
しらす | ||
さばみそ煮缶詰 | ||
ほっけ開き干し | ||
うなぎ | ||
アンチョビ | ||
はまぐり |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
なお半乾燥のしらす干しなどは1食当たりの摂取量が少ないため、それだけで十分なカルシウムを摂ることは難しいといえるでしょう。
1-3.カルシウムを含む豆類・大豆製品
カルシウムを含む豆類・大豆製品は以下のとおりです。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
油揚げ | ||
がんもどき | ||
厚揚げ | ||
米国産黄大豆 | ||
きな粉(黄大豆、全粒) | ||
国産黄大豆 | ||
中国産黄大豆 | ||
いり大豆(黄大豆) | ||
いり大豆(青大豆) | ||
きな粉(青大豆、全粒) | ||
焼き豆腐 | ||
高野豆腐(凍り豆腐) | ||
いんげんまめ | ||
国産黒大豆 | ||
いり大豆(黒大豆) |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
豆類や大豆製品はさまざまな加工状態の食品があり、毎日の食生活に取り入れやすいといえるでしょう。
1-4.カルシウムを含む野菜類
カルシウムは、野菜類にも含まれています。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
モロヘイヤ | ||
バジル | ||
しそ | ||
水菜 | ||
ルッコラ | ||
小松菜 | ||
ザーサイ | ||
野沢菜 | ||
しゅんぎく | ||
クレソン |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
これらの野菜類は生のままだけでなく、スープや漬物などのメニューでも摂取できます。
調理方法を工夫することにより食事を楽しみつつ、カルシウムを摂取することができるでしょう。
1-5.カルシウムを含む海藻類
カルシウムは海藻類からも摂ることができます。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
干しひじき | ||
刻み昆布 | ||
カットわかめ | ||
まこんぶ素干し | ||
りしりこんぶ素干し | ||
削りこんぶ | ||
焼きのり | ||
塩こんぶ | ||
まこんぶ素干し | ||
味付けのり | ||
昆布つくだ煮 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
ただし海藻類のうち乾燥状態のものなどは1食当たりの摂取量が少ないことに注意が必要です。
1食で十分な量のカルシウムを摂ることは難しいといえるため、この他の食品と組み合わせて食べると良いでしょう。
2.カルシウムの摂取に関するポイント
「どうしたらカルシウムを効率良く摂ることができるのかな?」
このように気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
この章では、カルシウムを含む食品を摂る際のポイントを解説します。
ポイント1 カルシウムの吸収率が高い食品を選ぶ
カルシウムを摂取する際には、カルシウムの吸収率が高い食品を選ぶことが勧められます。
栄養素は摂取した量がそのまま体に取り込まれるわけではなく、一部は吸収されて残りは体外に排出されてしまいます。
特にカルシウムは体に吸収されにくい栄養素です。
また食品によってカルシウムの吸収率は異なります。
牛乳など乳製品はカルシウムの吸収率が高く、カルシウムを摂取するのに適した食品なのです。
また大豆製品や骨ごと食べられる小魚、海藻類、緑黄色野菜などもカルシウムの吸収率が高いといわれています。
ポイント2 リンの摂り過ぎに注意する
カルシウムを摂取する際には、「リン」の摂り過ぎに注意が必要です。
リンはカルシウムと共に骨をつくるミネラルの一つです。
しかし摂り過ぎるとカルシウムの便への排せつを促すため、リンを含む食品の摂り過ぎは控えましょう。
リンは食品添加物としてスナック菓子やインスタント食品、加工食品などに広く使用されています。
また肉類もカルシウムに対してのリンの割合が高いため肉類中心の食生活は改めることが勧められます。
カルシウムとリンの摂取比率は1:1〜2程度が理想的とされています[3]。
スナック菓子などのリンを含む食品を摂取する際には、一緒に牛乳を飲みカルシウムを補うなどの工夫をし、バランスを保つようにしてくださいね。
リンについては以下の記事をご参照ください。
リンとは?はたらきや過不足による影響、食事摂取基準などを紹介
[3] 一般社団法人 日本乳業協会「乳製品に含まれるリンはカルシウムの吸収・利用の妨げになりませんか?」
ポイント3 カルシウムの吸収を促す物質を摂る
カルシウムを摂取する際には、カルシウムの吸収を促す物質を一緒に摂りましょう。
カルシウムの吸収を促進する成分には「ビタミンD」や「クエン酸」、「CPP(カゼインホスホペプチド)」などがあります。
ビタミンDはヒトの体の機能を正常に保つビタミンの一種で、油に溶けやすい性質のある「脂溶性ビタミン」に分類されます。
ビタミンDはカルシウムやリンといった骨をつくるミネラルの代謝に関与しています。
小腸や腎臓でこれらのミネラルの吸収を促進し、骨の形成を助けているのです。
ビタミンDの体内でのはたらきや、摂取源となる食品については以下の記事をご参照ください。
ビタミンDとは?体内でのはたらきや摂取すべき量、摂取源を紹介
クエン酸は酢や柑橘(かんきつ)類に含まれる酸味成分の一種です。
カルシウムはクエン酸と一緒に摂ることで、吸収が促進されるといわれています。
この他にも、クエン酸は体内でエネルギーをつくり出すために不可欠で、疲労回復に効果があるといわれています。
CPPは、牛乳のたんぱく質の約8割を占める「カゼイン」を消化する過程で生成される物質です[4]。
摂取されたカルシウムは小腸の上部で一部吸収され、大部分のカルシウムは下部に移動します。
下部に行くほど、カルシウムは体内に吸収されにくくなります。
CPPは、この過程でカルシウムが吸収されにくくなるのを防ぎ、吸収量を増やす作用があるといわれています。
[4] 一般社団法人 日本乳業協会「カルシウムの吸収を高めるためにはどうしたらよいでしょうか?」
ポイント4 カルシウムの吸収を阻む物質を避ける
カルシウムを摂取する際には、カルシウムの吸収を阻害する物質の摂取を避けましょう。
カルシウムの吸収を阻む物質には「シュウ酸」や「フィチン酸」、「食物繊維」などがあります。
シュウ酸は野菜に含まれるいわゆる「あく」の元となる成分です。
ほうれん草やたけのこ、紅茶、チョコレートなどに多く含まれています。
フィチン酸は穀類や植物の種子に多く含まれる物質です。
カルシウムや鉄、亜鉛、銅、マンガン、コバルトなどのミネラル類と結合しやすい性質を持ちます。
食品添加物として食品の変色や酸化の予防や、pH調整のために使われることがあります。
食物繊維はヒトの消化酵素では消化できない食品成分の総称で、炭水化物の一種です。
干しひじきや、しいたけ、わかめ、黄大豆、切り干し大根などに含まれています。
カルシウムの吸収を高め骨の健康を維持するためには、カルシウムとこれらの物質を同時に食べないようにしてくださいね。
食物繊維の体内でのはたらきや、摂取源となる食品については以下の記事をご参照ください。
食物繊維とは?はたらきや摂取目標量、摂取源となる食べ物を解説
3.カルシウムのはたらきと過不足による影響
カルシウムは、体に必要なミネラル(必須ミネラル)の一種です。
ミネラルのうち栄養素として体に必要なことが分かっているものを「必須ミネラル」といい、カルシウムを含めて16種類あります[5]。
この章ではカルシウムのはたらきや過不足の影響について解説します。
カルシウムについて、ミネラルについてはそれぞれ以下の記事をご参照ください。
カルシウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を解説
ミネラルとは?体に必要な理由と豊富に含まれる食べ物を種類別に紹介
[5] 国立研究開発法人国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識」
3-1.カルシウムのはたらき
カルシウムは体重の1〜2%を占める人体に最も多く含まれるミネラルです[6]。
体内のカルシウムの99%は骨や歯を構成し、また、残りの1%は血液や細胞外液などに存在します[6]。
血液に存在するカルシウムは血液凝固に関わります。
外傷などで出血が起こると、たんぱく質やカルシウムといった因子が活性化され出血を止めるようはたらきます。
この他、カルシウムは筋肉の収縮にも関わっています。
ヒトの体には心臓を拍動させる筋肉である心筋や、体を支えたり動かしたりする骨格筋などさまざまな筋肉があります。
これらの筋肉が収縮や弛緩を繰り返すことは、生命維持や身体活動において重要なはたらきの一つです。
筋肉の収縮は、カルシウムが筋肉の筋繊維に入り込むといった過程などを経て起こるとされています。
カルシウムは骨の健康だけでなく、生命維持においても重要な栄養素なのですね。
[6] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
3-2.カルシウムの過不足による影響
カルシウムが不足すると成人では骨粗しょう症、小児では骨に異常が現れるくる病になる恐れがあると考えられています。
骨粗しょう症とは、骨がもろく骨折しやすくなった状態のことです。
骨は、カルシウムを骨に取り込んで新しい骨をつくる「骨形成」と、古い骨を壊してカルシウムが骨から溶け出す「骨吸収」の骨代謝を繰り返し、骨の強度を保っています。
しかし慢性的にカルシウムの摂取量が不足すると、カルシウムが骨から取り出される量が多くなり、骨がもろくなり骨粗しょう症に至るのです。
カルシウム以外に、カルシウムの吸収に必要なビタミンDなどが不足し骨吸収が骨形成を上回ることも発症の要因になります。
また、くる病は子どものときにカルシウムやリンが骨に十分に沈着せず弱い骨ができてしまう病気で、身長の伸びが止まった大人では骨軟化症と呼びます。
骨が曲がりやすくなる、身長が伸びにくくなるといった症状の他、曲がった姿勢を維持するのに筋肉や関節に負担がかかって関節や背中が痛くなることがあります。
さらにカルシウムが極度に不足すると筋肉がけいれんすることがあるといわれています。
一方、健康な人が通常の食事からカルシウムを過剰に摂取しても健康障害が発生することはほとんどないといわれています。
ただしサプリメントなどから過剰に摂取した場合は、マグネシウムやリンなどの他のミネラルの吸収が抑制されることが分かっています。
マグネシウムやリンはカルシウムと共に骨を形成するミネラルであるため、それぞれをバランス良く摂取することが重要です。
またサプリメントによる過剰摂取では泌尿器系の結石やミルクアルカリ症候群を発症する恐れもあります。
結石は尿に含まれるカルシウムなどの物質が過剰になり、結晶化したものです。
腎臓でつくられた尿は、尿管や膀胱、尿道を通って排出されますが、この尿の通り道(尿路)に結石ができると、強い痛みを引き起こすことで知られています。
ミルクアルカリ症候群は、カルシウムやリン、マグネシウムなどの血中濃度が上昇し腎障害を引き起こす病気です。
腎障害では腎臓の機能が低下し、尿を正常につくることができなくなるために老廃物を排せつしたり、体内の水分や塩分の量を調節したりできなくなります。
サプリメントなどでカルシウムを補う際は、適切な量を守って摂取していくことが望ましいのですね。
4.カルシウムの適切な摂取量と平均摂取量
「カルシウムはどのくらい摂ったら良いのかな?」
このように気になっている方もいらっしゃるでしょう。
この章ではカルシウムの適切な摂取量の他、日本人のカルシウム摂取量の平均値をご紹介します。
ぜひ参考にしてくださいね。
4-1.カルシウムの適切な摂取量
厚生労働省によると、各年代のカルシウムの食事摂取基準は以下のとおりです。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 |
0~5カ月 | ||||||
6~11カ月 | ||||||
1~2歳 | ||||||
3~5歳 | ||||||
6~7歳 | ||||||
8~9歳 | ||||||
10~11歳 | ||||||
12~14歳 | ||||||
15~17歳 | ||||||
18~29歳 | ||||||
30~49歳 | ||||||
50~64歳 | ||||||
65~74歳 | ||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
厚生労働省は1歳以上の男女に対し、カルシウムの推定平均必要量および推奨量を設定しています。
また1歳未満では目安量が、18歳以上の男女では耐容上限量として2,500mg/日が設定されています[7]。
ご自分の年代や性別と照らし合わせてくださいね。
[7] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
4-2.カルシウムの平均摂取量
厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査報告」によると、各年代の男女の平均摂取量は以下のとおりです。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1~6歳 | ||
7~14歳 | ||
15~19歳 | ||
20~29歳 | ||
30~39歳 | ||
40~49歳 | ||
50~59歳 | ||
60~69歳 | ||
70~79歳 | ||
80歳以上 |
厚生労働省「令和5年国民健康・栄養調査報告」をもとに執筆者作成
カルシウムの摂取量は男女共に、多くの年代で推奨量どころか推定平均必要量をも下回っていると分かりますね。
骨だけでなく全身の健康を維持する上でも、日頃から意識してカルシウムを摂るようにしましょう。
5.カルシウムを含む食品についてのまとめ
カルシウムは乳製品や一部の魚介類、豆類・大豆製品、野菜類、海藻類などの食品に含まれています。
代表的なものとして乳製品ではパルメザンチーズ、エメンタールチーズ、魚介類では煮干しのかたくちいわしや、素干しのさくらえび、豆類や大豆製品では油揚げやがんもどきなどが挙げられます。
また野菜類ではモロヘイヤやバジル、海藻類ではひじき、刻み昆布などにも含まれています。
カルシウムは体に吸収されにくい栄養素です。
このため摂取する際には、吸収率の高いカルシウムを含む牛乳や大豆製品、骨ごと食べられる小魚などの食品を選ぶことがおすすめです。
またリンの摂り過ぎはカルシウムの便への排せつを促すため注意が必要です。
リンは食品添加物としてスナック菓子やインスタント食品、加工食品などに広く使用されています。
他にもカルシウムの吸収を促すビタミンD、クエン酸、CPPを一緒に摂ること、カルシウムの吸収を阻害するシュウ酸、フィチン酸、食物繊維などを一緒に摂取しないことを心掛けると良いでしょう。
カルシウムは男女共にほとんどの年代で不足しがちな栄養素のため、積極的に摂取するようにしてくださいね。
執筆者 メディパレット編集部
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