「モリブデンってなんだろう……」
「モリブデンにはどんなはたらきがあるのかな?」
モリブデンについて聞き覚えがなく、このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
モリブデンは人体に必要なミネラルの一つであり、そのなかでもごく少量しかない微量ミネラルに該当します。
一方でモリブデンは過剰摂取すると関節痛や胃腸障害を引き起こし、摂取不足になると頻脈や多呼吸といった症状を引き起こします。
この記事ではモリブデンとはどんな栄養素なのか、どんな食品に含まれているのかについて解説していきます。
1.モリブデンとは
モリブデンは体に欠かせない「必須ミネラル」の一つで、ごく少量のみ含まれる微量ミネラルに分類されます。
【関連情報】 「ミネラルとは?体に必要な理由と豊富に含まれる食べ物を種類別に紹介」についての記事はこちら
またモリブデンは「輝水鉛鉱(きすいえんこう)」という鉱石から発見された金属でもあります。
硫黄と結合しやすいという特徴があり、高層ビルや自動車用薄板、通信機器、電子部品など広く利用されています。
体内にあるモリブデンの多くは肝臓や腎臓に存在しており、ある種の酵素が作用するために必要な成分です。
モリブデンは他の重金属に比べて毒性が比較的低いため、過剰による問題が生じることはほとんどないといわれています。
2.モリブデンの食事摂取基準と平均摂取量
「モリブデンは1日にどれくらい摂取すれば良いのかな?」
という疑問を持っている方もいらっしゃるでしょう。
厚生労働省はモリブデンの摂取基準として、1歳以上に推定平均必要量と推奨量を設定しています。
年齢 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
推定平均必要量 | 推奨量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | |
1~5歳 | ||||
6~7歳 | ||||
8~9歳 | ||||
10~11歳 | ||||
12~14歳 | ||||
15~17歳 | ||||
18~29歳 | ||||
30~64歳 | ||||
65~74歳 | ||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
なお授乳中の人は、上記の摂取基準に次の数値を加えた量の摂取が勧められています。
時期 | 推定平均必要量 | 推奨量 |
---|---|---|
授乳婦 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
また1歳未満には目安量が設定されています。
月齢 | 男女共通 |
---|---|
0~5カ月 | |
6~11カ月 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
なお成人には過剰摂取による健康被害を防ぐために耐容上限量が設定されています。
モリブデンの1日当たりの耐容上限量は男性で600μg、女性で500μgです[3]。
日本人は平均して1日当たり225μgのモリブデンを摂取しています[3]。
モリブデンは穀類や豆類に多く含まれているため、これらを食べる機会の多い日本人はモリブデンの摂取量が多いと考えられています。
通常の食事を摂取していれば不足の心配はないといえますね。
3.モリブデンの摂取量による影響
「モリブデンの摂取量が過剰だったり、不足していたりすると体にどんな影響が出るのかな?」
日本人はさまざまな大豆製品を食べることが多いため、モリブデンの過剰摂取が心配という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここからはモリブデンの過剰摂取と摂取不足によって現れる体への影響を解説していきます。
3-1.モリブデンの過剰摂取による影響
モリブデンは摂り過ぎるとすぐに尿として排せつされるため、基本的には過剰摂取が健康に影響を及ぼすことは少ないといわれています。
しかし急性中毒や慢性中毒を引き起こすケースもあり、それぞれ異なる症状が見られます。
急性中毒では下痢などの胃腸障害に加えて、最悪の場合は昏睡(こんすい)状態・心不全によって死に至る恐れもあります。
一方慢性中毒の場合には関節の痛みや高尿酸血症といった痛風に似た症状が起こる可能性があります。
過剰摂取による健康への影響はほとんど考えられないものの、モリブデンを食事から摂取する際は耐容上限量を守るようにしましょう。
3-2.モリブデンの摂取不足による影響
モリブデンは通常の食生活を送っていれば十分に摂取できるため、不足することはないといわれています。
しかし、モリブデンを含まない静脈栄養を施行し長期間食事ができない場合には、摂取不足により頻脈や多呼吸といった症状が起こる恐れがあります。
また、同様の状態でモリブデンが不足すると夜盲症を引き起こす可能性もあります。
4.モリブデンを含む食品
モリブデンがどんな食品に含まれているか知りたいという人は多いのではないでしょうか。
ここからはモリブデンを摂取できる食品のうち特に含有量の多い、穀類、豆類、種実類の食品を紹介します。
どのような食品に含まれているのかを確認し、日々の食生活に取り入れてみてくださいね。
4-1.穀類
モリブデンを含む穀類は以下のとおりです。
食品名 | 加工状態など | 含有量(μg) |
---|---|---|
玄米(ご飯) | ||
うるち米(ご飯) | ||
フランスパン | ||
角形食パン | ||
山形食パン | ||
マカロニ・スパゲティ | ||
そば |
パンやご飯、そばなど日頃から食べる機会の多い食品が多く見られますね。
ご飯1杯分(150g)で1日の推奨量のモリブデンを摂取できますよ。
4-2.豆類
モリブデンは豆類にも含まれています。
食品名 | 加工状態など | 含有量(μg) |
---|---|---|
納豆 | ||
いり大豆(黄大豆) | ||
おから | ||
油揚げ | ||
絹ごし豆腐 | ||
がんもどき | ||
こし練りあん |
豆類は穀類と比べてもモリブデンの含有量が多いのが分かりますね。
4-3.種実類
種実類のモリブデン含有量も紹介します。
食品名 | 加工状態など | 含有量(μg) |
---|---|---|
らっかせい | ||
ピーナッツバター | ||
らっかせい | ||
バターピーナッツ | ||
アーモンド(味付け) | ||
カシューナッツ(味付け) | ||
へーゼルナッツ(味付け) | ||
マカダミアナッツ |
ナッツ類は間食に取り入れやすいので、手軽にモリブデンを摂取できそうですね。
5.モリブデンの食事摂取基準や含有食品についてのまとめ
モリブデンは輝水鉛鉱から発見された金属であり、人体に欠かせないミネラルの一つです。
ある種の酵素がはたらくのに欠かせません。
モリブデンは穀類や豆類に多く含まれ、日本人はこれらをよく摂取しているため不足の心配はありません。
また摂り過ぎた場合でも尿として排せつされるため、健康な人で過剰症になることはないとされています。
一方で急性中毒などを起こすケースもあるため耐容上限量を超えないようにしましょう。
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