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カリウムの効果とは?1日の摂取量や過不足による体への影響を解説

メディパレット編集部

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カリウムの効果とは?1日の摂取量や過不足による体への影響を解説

「カリウムにはどんな効果があるんだろう?」

「カリウムの過不足が体に与える影響を知りたい。」

カリウムは人間にとって不可欠なミネラルの一つであり、細胞内液の浸透圧調整やナトリウムの排出の促進といったはたらきがあります。

しかし不足すると浸透圧調整やナトリウム排出などのはたらきに影響が出るだけでなく、脱力や食欲不振、不整脈などの症状を引き起こすといわれています。

この記事ではカリウムを摂取することで期待できる効果と1日に摂取すべき量について解説します。

1.カリウムに期待できる効果

「カリウムってどんな効果があるのかな?」

カリウムはほかのミネラルと比べてなじみがないため、どんな効果が期待できるのか分からないという方もいらっしゃるかもしれません。

ここからはカリウムを摂取することで期待できる三つの効果について解説します。

カリウムに期待できる効果の解説図

【関連情報】 「カリウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を紹介」についての記事はこちら

1-1.血圧を下げる

血圧を測定する男性

カリウムには血圧を下げるはたらきがあります。

なぜかというと、カリウムにナトリウムの排せつを促す作用があるためです。

ナトリウムの過剰摂取は高血圧の最大の原因だといわれています。

ナトリウムとは
人体に欠かせないミネラルの一種です。成人の体内ではその多くが細胞外液に含まれており、細胞外液の浸透圧を調節することで、細胞外液量を一定に保っています。ナトリウムは主に食塩として摂取されることが多く、過剰に摂取することでむくみや高血圧を引き起こすリスクを高めます。

なぜ塩分の摂り過ぎが高血圧の原因になるか疑問に感じた方もいらっしゃるでしょう。

塩分を摂取すると、体液の濃度を一定に保つために体内の水分が増加します。

体内の水分が増えるとその分心臓に送り込まれる血液の量が増加し、血管にかかる圧力が強くなることで血圧が上がってしまうのです。

日本人は海外と比較してナトリウムの摂取量が多いため、特にカリウムの摂取が重要視されています。

実際に行われた動物実験や疫学研究ではカリウムの摂取量を増やすことで血圧が下がることが示唆されました[1]。

カリウムの摂取が高血圧の予防につながるということもできそうですね。

[1] National Library of Medicine「Guideline: Potassium Intake for Adults and Children.」

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「ナトリウムとは?体内でのはたらきや摂取目標量、摂取の注意点を解説」についてもっと知りたい方はこちら

1-2.筋肉のはたらきの維持

力こぶをつくる男性

カリウムは筋肉の収縮にも関わっているため、筋肉のはたらきを維持するのに欠かせないミネラルです。

人間の筋肉の収縮や神経伝達には「ナトリウムポンプ」が重要な役割を果たしています。

ナトリウムポンプとは
ナトリウムを細胞外に移動させ、カリウムを細胞内に取り入れる仕組みを持つたんぱく質です。

ナトリウムポンプのはたらきによって細胞内外のナトリウムとカリウムの濃度差が維持され、その濃度差を利用して活動の維持や情報伝達が行われています。

つまりカリウムとナトリウムが不足するとナトリウムポンプが正常に機能せず、筋肉の収縮がうまく行われなくなるのです。

筋肉がつるのもナトリウムポンプの機能低下が原因といわれています。

筋肉のはたらきを正常に維持するためには、ナトリウムとカリウムをバランス良く摂取する必要があるのですね。

【関連情報】 「ナトリウムが不足するとどうなる?摂取目標量や平均摂取量を解説」についてもっと知りたい方はこちら

「ナトリウムを多く含む食品は?健康への影響や減塩のポイントを解説」についてもっと知りたい方はこちら

1-3.むくみの予防・改善

脚をマッサージする女性

カリウムはむくみを予防したり改善したりする効果も期待できます

むくみの原因にはさまざまなものがありますが、塩分の摂り過ぎもその一つです。

塩分を摂り過ぎると体液の濃度を一定に保とうと体内に水分がため込まれ、むくみが現れることがあります。

しかし、カリウムを摂取して余分なナトリウムを排せつすることで、むくみの予防・改善に役立つと考えられるでしょう。

2.カリウムの過不足による体への影響

「カリウムが過剰になったり不足したりすると体にどんな影響が表れるのかな?」

このような疑問を抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここからはカリウムを過剰摂取した場合と、摂取不足の場合に表れる体への影響について解説していきます。

2-1.カリウムの過剰摂取が体に及ぼす影響

カリウムはたくさんの食材に含まれていますが、過剰摂取になることはほとんどないといわれています。

これは腎臓が不要なカリウムを尿として排出するためです。

しかし、腎機能の低下や薬の影響によってカリウムを十分に排出できなかったり、サプリメントによって過剰に摂取したりすると高カリウム血症を引き起す恐れがあります。

高カリウム血症は血液中のカリウム濃度が5mEq/L以上の状態のことです[2]。

高カリウム血症は軽度のものならほとんどの場合症状を引き起こすことはありません。

しかし、重症化すると心拍が速過ぎたり遅過ぎたりと異常なリズムになる「不整脈」を引き起こす可能性があります。

また血液中のカリウム濃度が非常に高くなると心臓が止まり、死に至ってしまう恐れもあるのです。

腎機能が正常にはたらいている方は、サプリメントなどからカリウムを摂取しようとしない限り過剰摂取を心配する必要はないといえるでしょう。

しかし、慢性腎臓病や腎不全を発症している方は、カリウム含有量の多い食品を避けるなど日々のカリウムの摂取量に注意する必要があります。

[2] 独立行政法人 国立病院機構 北海道医療センター「わかりやすい腎臓病の話 カリウムについて(1)」

2-2.カリウムの摂取不足が体に及ぼす影響

カリウムは基本的には摂取不足になることはありません

というのもカリウムは野菜類や果実類、肉類、魚介類などたくさんの食材に含まれており、通常の食生活を送っていれば摂取不足になることはないと考えられているためです。

しかし、嘔吐(おうと)や下痢、下剤や利尿薬などによって大量にカリウムが排出された場合には低カリウム血症を引き起こすことがあります。

血液中のカリウム濃度が多少低下した程度では症状が現れることはありませんが、大きく低下した場合には筋力低下、筋肉の痙攣(けいれん)、食欲不振、脱力感などの症状が現れます。

低カリウム血症は血液内のカリウム濃度がわずかに低下した程度では症状として現われないため、異常に気付きにくいのですね。

また低カリウム血症が慢性化すると腎臓に悪影響を及ぼすこともあります

心疾患を患っている方や特定の心臓の薬を服用している方は、血液中のカリウム濃度が少し下がっただけで不整脈を引き起こす恐れがあるため気を付けましょう。

3.カリウムの摂取目安量と平均摂取量

「カリウムは1日にどれくらいの量を摂取すれば良いのかな?」

カリウムの摂取基準量が分かれば、カリウムを食事から摂取する際の参考になりますよね。

ここからは日本人のカリウム摂取目安量と平均摂取量について紹介していきます。

3-1.カリウムの1日当たりの摂取目安量

カリウムの摂取基準には摂取目安量と摂取目標量が設定されています。

メモ
摂取目安量はその量を摂取すれば一定の栄養状態を維持できる量のことです。摂取目安量以上を摂取していれば摂取不足によるリスクはほとんどみられません。摂取目標量とは生活習慣病の予防を目的として定められた摂取量のことです。

カリウムの摂取目安量と摂取目標量は以下のとおりです。

【カリウムの食事摂取基準(mg/日)】
※横にスクロールできます
性別 男性 女性
年齢 目安量 目標量 目安量 目標量
0~5カ月
400
-
400
-
6~11カ月
700
-
700
-
1~2歳
900
-
900
-
3~5歳
1,100
1,600以上
1,000
1,400以上
6~7歳
1,300
1,800以上
1,200
1,600以上
8~9歳
1,600
2,000以上
1,400
1,800以上
10~11歳
1,900
2,200以上
1,800
2,000以上
12~14歳
2,400
2,600以上
2,200
2,400以上
15~17歳
2,800
3,000以上
2,000
2,600以上
18歳以上
2,500
3,000以上
2,000
2,600以上

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成

またカリウムは食品から摂取した場合、過剰摂取になるリスクが低いため、過剰摂取による健康障害の回避を目的とした「耐容上限量」は設定されていません。

注意!
腎臓病など腎機能が低下している方はカリウムの摂取量を制限する食事療法を行う必要があります。血液中のカリウム濃度を5.5mEq/L以下を目標として、1日のカリウム摂取量を1,500mg以下に抑えるようにしましょう[3]。病気の程度によってカリウムの摂取量は異なるため、医師や栄養士の指示を仰ぐようにしてください。

摂取目安量や摂取目標量をカリウム摂取の際の参考にしてくださいね。

[3] 東京女子医科大学病院腎臓病総合医療センター腎臓内科「慢性腎臓病の食事療法」

3-2.日本人のカリウムの平均摂取量

日本人のカリウムの平均摂取量は以下のとおりです。

【日本人のカリウム平均摂取量(mg/日)】
年齢 男性 女性
1〜6歳
1,588
1,435
7〜14歳
2,307
2,133
15〜19歳
2,280
2,060
20〜29歳
2,080
1,743
30〜39歳
2,100
1,896
40〜49歳
2,269
2,033
50〜59歳
2,290
2,153
60〜69歳
2,569
2,529
70〜79歳
2,764
2,648
80歳以上
2,536
2,250

厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」をもとに執筆者作成

男性の場合60代以上の方、女性の場合40代以上の方が摂取目安量分のカリウムを摂取できていることが分かります[4]。

一方、摂取目標量に関しては70代の女性を除いて、ほぼすべての年代で摂取目標量に達していません[4]。

WHOのガイドラインが示す心血管疾患などの生活習慣病のリスクを減らすための、1日のカリウム摂取は3,510mgとされています[4]。

心血管疾患とは
心臓や血管に生じる病気のことです。代表的な心血管疾患には、心臓に血液を送る冠動脈が血の塊でつまり血流が途絶える「心筋梗塞」や、冠動脈が動脈硬化などによって狭まり、十分な血液が心臓に送られなくなる「狭心症」などがあります。

世界基準からみても日本人のカリウム摂取量がとても低いといえるでしょう。

[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」

4.カリウムを上手に摂取するポイント

「カリウムを上手に摂取するにはどんなことに気を付ければ良いんだろう……」

カリウムはたくさんの食品に含まれていますが、意識してカリウムを摂取するためにはどんな食品に含まれるのか、どう調理すべきなのか知りたい人も多いのではないでしょうか。

ここからはカリウムを豊富に含む食品と調理法の注意点について解説します。

カリウムを効率的に摂取するポイント

ポイント1 カリウムを豊富に含む食品を摂取する

ザルにのったほうれんそう

カリウムは多種多様な食品に含まれていますが、なかでもカリウムを豊富に含む食品を食べることで上手にカリウムを摂取できます。

カリウムを豊富に含む食品には肉類や魚類、野菜類、果実類、いも類、豆類、藻類などがあります。

それでは具体的な食品とその含有量をいくつか紹介します。

【カリウムを多く含む食品と可食部100g当たりの含有量】

食品名 加工状態 含有量
アーモンド いり、無塩 740mg
ほうれん草 690mg
納豆 - 690mg
アボカド 590mg
えだまめ 590mg
ながいも 590mg
小松菜 500mg
さつまいも 皮なし、生 480mg
ブロッコリー 460mg
めかじき 440mg
かつお(春獲り) 430mg
ささみ 410mg
バナナ 360mg
メロン(露地メロン) 350mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

摂取目標量分のカリウムを摂取するために、カリウムを多く含む食品を普段の食事に取り入れてみてくださいね。

【関連情報】 「ほうれん草に含まれる栄養素とその効果とは?選び方や保存方法も解説」についてもっと知りたい方はこちら

ポイント2 野菜類は生野菜かスープで食べる

食品に含まれるカリウムは加工や精製が進むと含有量が減少するため調理法には注意しましょう。

特に野菜からカリウムを摂取する場合は、生野菜かスープで食べるのがおすすめです。

加熱調理する際はゆでたり煮たりするとゆで汁や煮汁にカリウムが流れ出してしまうので、煮汁やゆで汁をそのまま活用できるスープの方が効率良くカリウムを摂取できます。

またサラダなどの生野菜で摂取する場合には、水にさらすだけでもカリウムが流出してしまうため、水にさらし過ぎないようにしましょう。

調理法一つでカリウムの摂取量が大きく変わってくるので、カリウムを意識して摂取しようと考えている人は参考にしてみてくださいね。

5.カリウムの効果についてのまとめ

血圧を下げたり、むくみを予防・改善したり、筋肉を維持したりと、カリウムにはさまざまなはたらきがあります

カリウムはたくさんの食品に含まれているため、通常の食生活を送っている限り過不足になることはほとんどないといえます。

しかし、腎機能の低下や薬の影響で高カリウム血症を、嘔吐や下痢などが原因でカリウムが大量に排出されると低カリウム血症を引き起こす可能性があります。

一定の栄養状態を維持したり生活習慣病を予防したりするためにも、1日の摂取目安量や摂取目標量を意識してカリウムを摂取するようにしましょう。

カリウムを豊富に含む食品を積極的に取り入れてみたり、調理法を工夫したりするだけで効率良くカリウムを摂取できるのでぜひ試してくださいね。

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執筆者 メディパレット編集部

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