「バナナにはどんな栄養素が含まれているんだろう?」
「バナナを食べたら太るんじゃないかな……」
このように気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
バナナは糖質が多い果物ですが、ビタミンやミネラルなど体にとって重要な栄養素を含んでいます。
この記事ではバナナに含まれるカロリーや栄養素とそのはたらきについて解説します。
またバナナをおいしく食べるポイントについても併せてご紹介するので参考にしてくださいね。
1.バナナの基礎知識
バナナはスーパーやコンビニなどの店頭で季節を問わず見かける果物ですが、原産地や特徴についてはあまり知られていないかもしれませんね。
まずはバナナにまつわる基礎知識をご紹介しましょう。
バナナはバショウ科バショウ属の植物です。
木のように見える部分は茎で、1本の茎に約10~15房のバナナがなります。
日本に初めてバナナが輸入されたのは1903年で、消費が増え始めたのは1915年ころといわれています。
現在、世界で栽培されているバナナには生食用と料理用の2種類に分けられ、品種は数百種類以上にも及ぶといわれています。
バナナの主な原産地は東南アジアの熱帯地域で、日本で販売されているバナナも約8割がフィリピン産です[1]。
日本では沖縄などの暖かい地域でわずかに生産されています。
なお、よく熟した黄色いバナナには害虫が付いている恐れがあるため、日本では黄色いバナナの輸入が「植物防疫法」により禁止されています。
そのため日本では未熟な青いバナナを輸入し、追熟させて黄色くしたものを店頭に並べているのです。
[1] 農林水産省「果樹をめぐる情勢」
2.バナナのカロリー
私たちにとって身近な果物であるバナナですが、どれくらいカロリーがあるのかについては知らないという方も多いでしょう。
バナナの100g当たりのカロリーは93kcalです[2]。
代表的な果物のカロリーと比較してみましょう。
食品名 | 加工状態など | カロリー |
---|---|---|
バナナ | ||
ぶどう(皮なし) | ||
りんご(皮なし) | ||
うんしゅうみかん(じょうのう) | ||
メロン | スイカ | |
もも |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
上の表のとおり、りんごやみかんなど他の代表的な果物と比較するとバナナのカロリーは比較的高いといえます。
「カロリーが高いからバナナを食べたら太るんじゃないかな……」
このように心配になる方もいらっしゃるかもしれませんね。
他の果物と比べるとバナナはカロリーが高いですが、間食として挙げられるお菓子などと比べると低カロリーです。
例えばシュークリーム100gは211kcal、ショートケーキ100gは314kcalです[2]。
厚生労働省によると1日の間食の目安は約200kcalといわれており、メロンパンやショートケーキなどは目安量を超えています[3]。
一方、バナナは100g当たり93kcalで、200kcalに収めるには2本食べることができます[2]。
果物の摂取目標値は200gであり[4]、バナナ2本はこの目標量を達成することもできます[5]。
ただし、バナナも食べ過ぎてしまうとそれだけカロリーを摂取してしまうことになるため、適量を意識するようにしましょう。
カロリーについて詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
カロリーとは何?ダイエットを始める前に知っておきたい基礎知識
3.バナナに豊富に含まれる栄養素とそのはたらき
「バナナにはどんな栄養素が豊富に含まれているんだろう?」
このように気になる方もいらっしゃるでしょう。
バナナに豊富に含まれる栄養素は、糖質、ビタミンB6、葉酸、ビタミンC、カリウム、マグネシウム、銅です。
栄養素 | 含有量 |
---|---|
糖質 | |
ビタミンB6 | |
葉酸 | |
ビタミンC | |
カリウム | |
マグネシウム | |
銅 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
この章ではそれぞれの栄養素とそのはたらきについて解説していきます。
3-1.糖質
バナナには100g当たり18.5gの糖質が含まれています[6]。
糖質は炭水化物の一種で、ヒトの体のエネルギー源となる栄養素の一つです。
糖質が不足するとエネルギー不足による集中力低下や疲労感の原因となります。
特に糖質の一種である「ブドウ糖」は脳のエネルギー源として重要です。
またドウ糖は運動時のエネルギー源にもなります。
筋肉や肝臓には、多糖類であるグリコーゲンが蓄えられています。
グリコーゲンは必要になるとブドウ糖に分解されて筋肉を動かすエネルギー源となったり、血糖値を一定に保ったりするはたらきをします。
なお、グリコーゲンはブドウ糖に反応して分泌されるホルモン「インスリン」によって合成されるため、ブドウ糖を摂取することで合成が促進されます。
バナナにはブドウ糖と同じく単糖類の果糖や、二糖類のショ糖、多糖類のでんぷんなども含まれています。
単糖類や二糖類は吸収が速いのに対し、多糖類は吸収までに時間がかかります。
さまざまな種類の糖質が含まれるバナナは、持続的にエネルギーを補給してくれる食べ物だといえるでしょう。
なお、厚生労働省は炭水化物から摂取するエネルギー(カロリー)を、1日の総エネルギー摂取量(総摂取カロリー)の50~65%にするという目標量を設定しています[7]。
糖質には1g当たり約4kcalのエネルギーがあるため[7]、1日の推定エネルギー必要量(推定必要カロリー)が2,000kcalである場合、約250〜325gの糖質を摂るべきだという計算になります。
糖質についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
糖質、糖類、糖分の違いは?太る理由や健康的な食べ方などを解説!
3-2.ビタミンB6
バナナには100g当たり0.38mgのビタミンB6が含まれています[8]。
ビタミンB6は水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB群に含まれます。
ビタミンB6は体内でたんぱく質や脂質、炭水化物の代謝に補酵素として関わります。
ビタミンB6は補酵素としてエネルギー産生栄養素を体内で利用するのに欠かせない物質なのですね。
ビタミンB6は特にたんぱく質の代謝を助けるためたんぱく質の摂取量が多い人ほどビタミンB6の必要量も多くなります。
ビタミンB6が不足すると免疫機能の低下、湿疹、皮膚炎、口角炎、舌炎、貧血などを引き起こす恐れがあります。
ビタミンB6の1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~64歳で1.5mg、65歳以上で1.4mg、女性の場合18歳以上で1.2mgです[9]。
女性であればバナナ1本で推奨量の約3分の1を摂取できるといえるでしょう。
ビタミンB6についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
3-3.葉酸
バナナには100g当たり26μgの葉酸が含まれています[10]。
DNAやRNAの合成、アミノ酸の代謝、たんぱく質合成など、細胞の増殖に深く関係しています。
胎児の正常な発育にも重要な栄養素であり、女性は妊娠前から産後にかけて摂取することが推奨されています。
また、中高齢者ではビタミンB6やビタミンB12と共に葉酸が不足すると、血液中の「ホモシステイン」が増加し、動脈硬化を引き起こす原因となり心臓疾患や脳卒中のリスクが高まるといわれています。
葉酸の1日当たりの摂取推奨量は18歳以上の男性、女性共に240µgです[11]。
葉酸についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
葉酸が多く含まれている食べ物とは?効果や摂取基準もあわせて解説
3-4.ビタミンC
バナナには100g当たり16mgのビタミンCが含まれています[12]。
ビタミンCは水溶性ビタミンの一種でヒトは体内で合成することができません。
そのため、野菜や果物などから摂取する必要があります。
ビタミンCは皮膚や腱(けん)、軟骨などを構成するたんぱく質「コラーゲン」をつくるために必須の栄養素です。
また、ビタミンCには抗酸化作用があるため狭心症や心筋梗塞などの心臓血管系の疾病予防効果が期待できます。
ビタミンCが不足すると血管が脆くなり出血しやすくなる「壊血病」を引き起こす恐れがあります。
壊血病にはいらいらする、顔色が悪くなる、貧血を起こすなどの症状があります。
ビタミンCの1日当たりの摂取推奨量は18歳以上の男性、女性共に100mgです[13]。
バナナだけでなく、その他の野菜、果物からもビタミンCを摂取できると良いですね。
ビタミンCについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンCの美容・健康効果は?目標摂取量と豊富に含まれている食品
3-5.カリウム
バナナには100g当たり360mgのカリウムが含まれています[14]。
果物のなかでもバナナはカリウムを豊富に含んでいます。
カリウムは細胞内液の浸透圧の調節や神経伝達、筋肉の収縮、体液の酸性とアルカリ性のバランス維持などさまざまなはたらきに関わるミネラルの一つです。
また、カリウムにはナトリウムの排せつを促し、血圧低下につながることが示されています。
カリウムの不足は脱力感、筋力低下、食欲不振などの症状を引き起こす恐れがあります。
しかし、カリウムは多くの食品に含まれているため、下痢や多量の発汗、利尿剤の服用などの場合以外でカリウムが欠乏する心配はないでしょう。
カリウムの1日当たりの摂取目標量は18歳以上の男性で3,000mg以上、同じく女性で2,600mg以上です[15]。
【関連情報】 「カリウムを豊富に含む食べ物は?効果と摂取基準も解説」についての記事はこちら
「カリウムとは?はたらきや摂取すべき量、摂取源となる食品を紹介」についての記事はこちら
「カリウムの効果とは?1日の摂取量や過不足による体への影響を解説」についての記事はこちら
「カリウムが不足するとどうなる?体への影響や摂取源となる食品を紹介」についての記事はこちら
3-6.マグネシウム
バナナには100g当たり32mgのマグネシウムが含まれています[16]。
マグネシウムは人体に必要なミネラルの一種でカルシウムなどと一緒に骨を形成する他、筋収縮、血糖値や血圧の調節、たんぱく質やDNAの生成にも関わっています。
体の中のマグネシウムの約50~60%が骨に含まれています[17]。
マグネシウムの不足は骨粗しょう症や精神疾患、心疾患、筋肉の収縮異常などを引き起こす恐れがあります。
マグネシウムの食事摂取基準は以下のとおりです。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
18~29歳 | ||
30~49歳 | ||
50~64歳 | ||
65~74歳 | ||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
バナナを食べることで健康維持に大切なマグネシウムも補給できるのはうれしいものですね。
マグネシウムについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
マグネシウムを多く含む食べ物は?1日の摂取推奨量やはたらきを解説
3-7.銅
バナナには100g当たり0.09mgの銅が含まれています[18]。
銅は微量ミネラルの一種で主に骨や骨格筋、血液に存在します。
エネルギー産生や鉄代謝、神経伝達物質の産生などに関わるミネラルです。
日常生活で欠乏する心配はあまりありませんが、極端に不足した場合には貧血、骨の異常、髪の毛や皮膚の脱色、免疫力の低下を来すことがあります。
*銅の1日当たりの摂取推奨量は、男性の場合18~29歳で0.8mg、30~64歳で0.9mg、65歳以上で0.8mg *です[19]。
*女性の場合18歳以上で0.7mg *です[19]。
また、バナナに含まれているビタミンCと果糖は銅の吸収を高めるといわれています。
ビタミンとミネラルを含んだバナナは健康維持に適した果物といえますね。
4.バナナに含まれる栄養素とそのはたらき
「バナナに含まれている他の栄養素はどのようなはたらきをするのかな?」
こう思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。
栄養素 | 含有量 |
---|---|
ビタミンE | |
ナイアシン | |
パントテン酸 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
ここでは、それぞれの栄養素とそのはたらきについて説明します。
4-1.ビタミンE
バナナには100g当たり0.5mgのビタミンEが含まれています[20]。
ビタミンEは脂溶性のビタミンの一種で強い抗酸化作用を持っています。
ビタミンEは抗酸化作用を持つためフリーラジカルという体内で細胞を傷つける化合物から細胞を守るのを助けます。
また、免疫機能を高めたり、血管内で血液が凝固するのを防いだりするはたらきもあります。
通常の食事を摂っている場合、ビタミンEの欠乏症は起こりにくいといわれています。
*ビタミンEの1日当たりの摂取目安量は、男性の場合18〜64歳で6.5mg、65〜74歳で7.5mg、75歳以上で7.0mg *です[21]。
*女性の場合18〜29歳で5.0mg、30〜64歳で6.0mg、65〜74歳で7.0mg、75歳以上で6.0mg *です[21]。
バナナは脂溶性ビタミンも含む優れた果物といえますね。
ビタミンEについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。
ビタミンEが多く含まれる食べ物は?効果や摂取基準も詳しく解説
4-2.ナイアシン
バナナには100g当たり0.9mgのナイアシンが含まれています[22]。
ナイアシンは動物性食品ではニコチンアミド、植物性食品ではニコチン酸として存在しています。
摂取されたニコチンアミドとニコチン酸は、体内ではピリジンヌクレオチドという物質に変換され、酸化還元反応の補酵素として作用します。
ナイアシンは抗酸化作用、脂肪酸の整合性、ステロイドホルモンの生合成、DNAの修復や合成、細胞分化などに関与しています。
日本ではまれですが不足すると皮膚炎や下痢、精神神経障害などの症状が起こるペラグラを引き起こす恐れがあります。
ナイアシンの食事摂取基準は以下のとおりです。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
18~29歳 | ||
30~49歳 | ||
50~64歳 | ||
65~74歳 | ||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
【関連情報】 「ナイアシンはどんなビタミン?はたらきや食事摂取基準、摂取源を紹介」についての記事はこちら
4-3.パントテン酸
バナナには100g当たり0.44mgのパントテン酸が含まれています[23]。
パントテン酸はビタミンB群の一種で補酵素の構成成分として、特に糖質や脂質の代謝に重要なはたらきをしています。
パントテン酸が不足すると成長の停止、副腎障害、手足のしびれ、頭痛、疲労、不眠、食欲不振などを引き起こす恐れがあります。
しかし、パントテン酸はさまざまな食品に含まれているため欠乏症の心配はないでしょう。
*パントテン酸の1日当たりの摂取目安量は、18歳以上の男性で6mg、女性で5mg *です[24]。
バナナは代謝に重要なビタミンB群を多く含む果物といえますね。
【関連情報】 「パントテン酸とは?はたらきや摂取目安量、摂取源となる食品を紹介」についての記事はこちら
5.バナナをおいしく食べるためのポイント
せっかくバナナを食べるなら、おいしく食べたいですよね。
ここではバナナの選び方や保存方法について解説します。
ポイント1 食べたいタイミングに合ったものを選ぶ
皮に「シュガースポット」(黒い斑点)が出ていれば完熟しています。
今すぐに甘いバナナが食べたい人はシュガースポットの入ったものを選びましょう。
シュガースポットが皮全体にあり、黒ずみが目立つ、やわらか過ぎる、軸周辺が真っ黒になっているものは傷んでいる可能性があるため注意しましょう。
数日かけて食べるなら、軸が薄緑色~黄色のものを選びましょう。
この状態のものは数日でシュガースポットが出てきます。
ポイント2 追熟のためには暖かい場所で保存する
バナナは温度の低いところは傷みやすいため、追熟のためには冷蔵庫ではなく暖かい場所で保存すると良いでしょう。
好みの熟度になったら、新聞紙にくるみ冷蔵庫で保存すると暑い時期でもおいしく食べることができます。
長期にわたって保存したい場合は、皮をむいた状態で1本ずつ冷凍保存することも可能ですよ。
ポイント3 好みの熟度で食べる
バナナは熟度によって味が異なるため、好みの熟度で食べましょう。
皮にシュガースポットが現れていたら、バナナが甘く熟している証拠です。
少し青めのものはすっきり、全体に黄色くなったものは程良く甘いといえます。
それぞれおいしく食べられるため好みの熟度に応じて選ぶと良いでしょう。
6.バナナに含まれる栄養素についてのまとめ
バナナに豊富に含まれる栄養素は糖質、ビタミンB6、葉酸、ビタミンC、カリウム、マグネシウム、銅です。
その他にも豊富とはいえないもののビタミンE、ナイアシン、パントテン酸も含まれています。
バナナは他の果物と比較すると糖質が多くカロリーは高めですが、ビタミン、ミネラルなど体にとって重要な栄養素を含んでいます。
バナナは手軽に食べられるのもうれしいポイントですよね。
シュガースポットが現れると食べ頃ですが、熟度によって味が変わるため、お好みの熟度で味の違いを楽しむのもおすすめです。
熟するまでは室温で保存し、好みの熟度になったら冷蔵庫で保存すると良いでしょう。
豊富な栄養素を含むバナナを食生活に取り入れて健康維持に役立ててくださいね。