ビタミンB6は水溶性ビタミンの一種でビタミンB群に含まれます。
ビタミンB6は体の中でさまざまなはたらきを果たしており、特にたんぱく質を構成するアミノ酸の代謝には欠かせません。
不足すると皮膚炎などを引き起こすため、健康や美容のためには積極的に摂取しておきたい栄養素です。
この記事ではビタミンB6のはたらきからビタミンB6を豊富に含む食品、どれくらい摂取すれば良いのかといったことまで詳しくご説明します。
1.ビタミンB6とは
ビタミンB6はビタミンB群の一つで、水に溶けやすい水溶性のビタミンです。
ビタミンB6はさまざまな反応において「酵素」のはたらきを助ける「補酵素」として作用します。
酵素の一部は補酵素がなければ十分に作用しないため、補酵素としてはたらくビタミンB6は体の中のさまざまな化学反応を支える物質だといえるのです。
特にたんぱく質の構成要素であるアミノ酸の代謝を助ける重要な役割を果たしています。
そのため、たんぱく質の摂取量が増えるとそれに伴ってビタミンB6の必要量も増加します。
またビタミンB6の含有量が一定の基準を満たす食品は「たんぱく質からのエネルギーの産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素」が含まれているとして栄養成分の機能を表示することができます。
【関連情報】 「補酵素とは?酵素との関係やはたらき、元となるビタミンについて解説」についての記事はこちら
「ビタミンとは?13種類のビタミンのはたらきと食事摂取基準を紹介」についての記事はこちら
「水溶性ビタミンとは?9種類のビタミンのはたらきや食事摂取基準」についての記事はこちら
「ビタミンB群とは?8つの栄養素のはたらきや適切な摂取量を解説」についての記事はこちら
「ビタミンB6のはたらきは?食事摂取基準や摂取源となる食品も紹介」についての記事はこちら
[1] 公益財団法人 長寿科学振興財団 健康長寿ネット「酵素の働きと健康効果」
2.ビタミンB6を豊富に含む食べ物
「ビタミンB6はどんな食べ物から摂取できるの?」
というのが気になるところですよね。
ビタミンB6は野菜などの植物性食品からも肉などの動物性食品からも摂取できる栄養素です。
ここではビタミンB6を効率的に摂取できる食品を食品群別にご紹介しましょう。
2-1.ビタミンB6を豊富に含む植物性食品
ビタミンB6は以下のようにさまざまな植物性食品に含まれています。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
にんにく | ||
ピスタチオ | ||
ドライトマト | ||
焼きのり | ||
きな粉(黄大豆) | ||
らっかせい | ||
玄米 | ||
モロヘイヤ | ||
ブロッコリー |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
にんにくは非常に多くのビタミンB6を含んでいますが、1食当たりの摂取量を考えると摂取源としてはそこまで効率的とはいえないかもしれません。
一つの摂取源に頼らず、さまざまな食品からバランス良く摂取したいですね。
2-2.ビタミンB6を豊富に含む動物性食品
ビタミンB6は赤身の魚や肉などの動物性食品からも摂取することができます。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
牛レバー | ||
かつお | ||
めばちまぐろ | ||
鶏レバー | ||
鶏むね肉 | ||
さけ(しろさけ) | ||
きはだまぐろ | ||
鶏ささみ | ||
まさば | ||
豚レバー | ||
鶏むね肉 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
1食当たりの摂取量を考慮すると、植物性食品よりも動物性食品の方が効率的にビタミンB6を摂取できるといえるかもしれませんね。
3.ビタミンB6の不足や過剰摂取による影響
栄養素が不足すると体に悪い影響が生じることは皆さんなんとなくご存じですよね。
しかし多く摂れば良いというものでもなく、栄養素によっては過剰摂取によって何らかの症状が現れることもあります。
それでは、ビタミンB6が不足したり、反対に摂りすぎたりした場合にはどうなるのでしょうか?
ここからはビタミンB6の不足や過剰摂取が体に与える影響についてご説明しましょう。
3-1.ビタミンB6の不足による影響
ビタミンを十分に摂れていないと肌が荒れてしまうとイメージする方も多いのではないでしょうか。
ビタミンB6が不足すると、肌荒れをはじめとした皮膚炎、口角炎、舌炎などの症状が現れます。
また、免疫力の低下や、貧血や聴覚過敏などの悪影響が生じる場合もあるため、健康のためにはしっかり摂っておきたい栄養素ですね。
ただしビタミンB6が単独で不足状態に陥ることはあまりありません。
ビタミンB6不足は他のビタミン不足と同時に起こるといわれているため、普段からバランスの取れた食生活を心掛けましょう。
3-2.ビタミンB6の過剰摂取による影響
水溶性ビタミンの多くはたくさん摂取しても尿中に排出されるため、食事から摂りすぎて体を壊す心配はないものがほとんどです。
しかし、ビタミンB6を過剰に摂取すると体に悪影響があることが分かっています。
具体的には神経に障害が生じたり、骨が痛んだり、筋肉が弱くなってしまったりするのです。
また男性の場合は精巣が萎縮したり精子の数が減ったりしてしまう可能性もあります。
ただし過剰摂取による影響は1日当たり数gの摂取を数カ月程度続けたときに生じるものであるため、通常の食生活で体に変調をきたすことはないと考えられます。
あまり気にしすぎる必要はないのでご安心くださいね。
4.ビタミンB6の食事摂取基準と摂取状況
「ビタミンB6はどれくらい摂取するべきなんだろう?」
「普段の食生活でビタミンB6は十分に摂取できているのかな?」
このように気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここでは、ビタミンB6の摂取量の目安と、日本人の平均摂取量をご紹介します。
4-1.ビタミンB6の食事摂取基準
厚生労働省は各栄養素の1日の摂取量の目安となる「食事摂取基準」を発表しています。
ビタミンB6の食事摂取基準を確認してみましょう。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 耐容上限量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 耐容上限量 |
1〜2歳 | ||||||
3〜5歳 | ||||||
6〜7歳 | ||||||
8〜9歳 | ||||||
10〜11歳 | ||||||
12〜14歳 | ||||||
15〜17歳 | ||||||
18〜29歳 | ||||||
30〜64歳 | ||||||
65〜74歳 | ||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
なお、1歳未満の乳児に対しては目安量が設定されています。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢 | 目安量 | 目安量 |
0~5カ月 | ||
6~11カ月 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
また妊婦・授乳婦には推定平均必要量・推奨量に以下のとおり付加量が設けられています。
推定平均必要量 | 推奨量 | |
---|---|---|
妊婦 | ||
授乳婦 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
4-2.ビタミンB6の摂取状況
平均的な食生活でビタミンB6が十分に摂れているのか気になっている方も多いでしょう。
厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」によると、1日当たりのビタミンB6の平均摂取量は以下のとおりです。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
1~6歳 | ||
7~14歳 | ||
15~19歳 | ||
20~29歳 | ||
30~39歳 | ||
40~49歳 | ||
50~59歳 | ||
60~69歳 | ||
70~79歳 | ||
80歳以上 |
厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」をもとに執筆者作成
男女とも多くの年代においてビタミンB6の摂取量が食事摂取基準の推奨量を下回っている傾向にあるといえますね。
また、推定平均必要量にも達していない年代もあります。
この記事をお読みになっているあなたも十分な量のビタミンB6を摂取できていないかもしれません。
食事にビタミンB6を含む食べ物を積極的に取り入れたいですね。
5.ビタミンB6を含む食べ物についてのまとめ
ビタミンB6はビタミンB群の一種で、体内では約100種類もの酵素の補酵素としてはたらきます。
体の機能を正常に保つ上で欠かせない栄養素なのですね。
特にたんぱく質を構成するアミノ酸の代謝において重要なはたらきを果たすため、たんぱく質摂取量が増加するとそれに伴ってビタミンB6の必要量も増加します。
ビタミンB6は植物性食品からも動物性食品からも摂取が可能です。
植物性食品では特ににんにくにやピスタチオ、ドライバナナ、ドライトマトなどに豊富に含まれています。
また動物性食品では赤身の魚や肉などに含まれており、まぐろやレバーなどからも摂取できます。
1食当たりの摂取量を考慮すると動物性食品の方がビタミンB6の摂取源としては効率的であるといえるでしょう。
ビタミンB6の不足は皮膚炎や口角炎、舌炎などの原因となります。
ただしビタミンB6が単独で不足することはまれで、多くの場合他のビタミンと同時に不足するため、バランスの取れた食生活を心掛けることが重要だと考えられます。
前述の食品からビタミンB6を摂取しつつ、他のビタミンも十分に摂取できるよう意識してみてくださいね。