「ビタミンAが肌に良いって聞いたけど本当?」
「どんな食べ物を食べればビタミンAを摂取できるんだろう?」
このようにビタミンAについて気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ビタミンAは目の機能や皮膚・粘膜の健康を維持するために必要な栄養素です。
この記事ではビタミンAが多く含まれている食品や不足・過剰摂取によって起こる影響、必要な摂取量などについて詳しく解説します。
1.ビタミンAとは
ビタミンAは油に溶けやすい性質を持った脂溶性ビタミンの1種です。
皮膚や粘膜の健康を保つほか、目の機能を正常に保つ上でも重要な役割を担っています。
特に暗い場所でものを見るためにはビタミンAが欠かせません。
暗い場所では、目の網膜にある「ロドプシン」という光を感知する受容体が増え、少しの光でもものを見ることができる仕組みになっています。
ビタミンAはこのロドプシンの材料の一つとなるのです。
そのほかにもビタミンAは胎児や乳幼児の成長促進にも関わっています。
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「脂溶性ビタミンとは?はたらきや食事摂取基準、摂取源の食品を紹介」についての記事はこちら
「ビタミンAにはどんな効果がある?目標摂取量とおすすめの食品を紹介」についての記事はこちら
2.ビタミンAを多く含む食べ物
ビタミンAは主に動物性食品に多く含まれています。
「野菜からは摂れないの?」
と気になった方もいらっしゃるかもしれません。
野菜などの植物性食品には、体内でビタミンAと同様のはたらきをする「プロビタミンA」が含まれています。
ここからはビタミンAやプロビタミンAを効率的に摂取できる食べ物を動物性食品と植物性食品に分けてご紹介しましょう。
2-1.ビタミンAを多く含む動物性食品
ビタミンAは鶏レバーや豚レバーなどをはじめとした動物性食品に多く含まれています。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
鶏レバー | ||
豚レバー | ||
ほたるいか | ||
うなぎ | ||
ぎんだら | ||
牛レバー | ||
くろまぐろ(養殖) | ||
卵黄 | ||
いくら | ||
プロセスチーズ | ||
しらす干し | ||
全卵 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
ビタミンAはレバー類や魚介類から効率的に摂取できます。
また、バターや卵黄など一回に食べる量が少ない食品でも、意識して料理に取り入れることでビタミンAの摂取量を増やすことができますよ。
2-2.ビタミンA(プロビタミンA)を多く含む植物性食品
植物性食品には、体内でビタミンAとしてはたらくプロビタミンAが含まれています。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
味付けのり | ||
干しのり | ||
焼きのり | ||
しそ(葉) | ||
モロヘイヤ | ||
にんじん | ||
春菊 | ||
乾燥わかめ | ||
干しひじき | ||
ほうれん草 | ||
にら | ||
小松菜 |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
プロビタミンAとしてはたらくカロテノイドにはα-カロテンやβ-カロテン、β-クリプトキサンチンなど約50種類の物質が該当します。
なかでも「β-カロテン」を多く含む緑黄色野菜は要注目です。
【関連情報】 「緑黄色野菜とは?含まれる成分や摂取目標量、調理する際のポイント」についての記事はこちら
β-カロテンはほかのプロビタミンAよりも体内で効率良くビタミンAに変換される上、「抗酸化作用」も持っています。
β-カロテンは加熱することでより効率的に摂取できるので、例えば野菜を炒め物などにするのもおすすめです。
【関連情報】 「ビタミンAにはどんな効果がある?目標摂取量とおすすめの食品を紹介」についての記事はこちら
「カロテンの効果とは?多く含む食べ物や効率的な摂取方法について解説」についての記事はこちら
「カロテノイド(カロチノイド)とは?はたらきや摂れる食べ物、効率的な取り入れ方を解説【レシピ付き】」についての記事はこちら
3.ビタミンAの不足や過剰摂取による影響
「意識して摂るようにしたいけど、普段の食事に取り入れるのは難しそう……ビタミンAが不足するとどうなるの?」
「体に良いならたくさん摂りたいけど、摂取し過ぎたらどうなるんだろう?」
ビタミンAが不足するとどうなるのか、反対に多く摂っても体に影響はないのか気になりますよね。
ここからは、ビタミンAの不足や過剰摂取によって起こる影響について解説します。
3-1.ビタミンAの不足による影響
ビタミンAは肝臓で多量に蓄えられているので、かなり長期的にビタミンAを含まない食事を続けるようなことがない限りは不足する可能性は低いとされています。
食事からビタミンAを摂取する量が少なくなったとしても、すぐに症状が起こるわけではないのですね。
しかしビタミンAが不足した場合にはさまざまな悪影響が生じてしまうため注意が必要です。
ビタミンA欠乏症の初期段階としては「夜盲症」が発生します。
夜盲症は暗いところで物が見えにくくなる病気で、進行すると最悪の場合失明に至る可能性もあります。
また皮膚の乾燥・角質化を引き起こしたり、粘膜が乾燥することで感染症にかかりやすくなったりします。
さらに成長が阻害されたり神経・骨の発達が抑制されたりすることもあるのです。
特にアルコールを多く飲んだり極端な食事制限によるダイエットを行なったりするとビタミンAの消費や摂取不足を招くためしっかりとビタミンAを摂取しておきましょう。
3-2.ビタミンAの過剰摂取による影響
反対にビタミンAを摂り過ぎてしまった場合、体に悪影響はあるのかという点も気になりますよね。
ビタミンAを過剰摂取すると体内に蓄積され健康に悪影響がおよぶ可能性があります。
短期間に過剰に摂取すると腹痛や吐き気、嘔吐が起こったり、皮膚の表面がはがれ落ちたりする場合があるのです。
長期にわたって過剰摂取した場合には、皮膚の乾燥や脱毛、関節や骨の痛み、食欲不振や体重減少、頭痛、肝臓やすい臓が腫れて大きくなる肝脾腫などの症状が現れます。
「ビタミンAを摂り過ぎるとこんなに悪影響があるの……?」
と不安になってしまうかもしれませんが、通常の食事で摂取する分には大きな心配をする必要はないといえます。
ビタミンAの摂り過ぎによる健康被害は、サプリメントや大量のレバーの摂取によって起こった事例しか報告されていません。
いつもの食事でビタミンAを多く含む食材を意識して増やす程度であれば、体への悪影響はほとんどないと考えられますね。
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4.ビタミンAの食事摂取基準
「目や肌を健康に保つためには、1日にビタミンAをどのくらい摂れば良いんだろう?」
「普段の食事で十分に足りているのか心配だな……」
ビタミンAは不足や過剰摂取が起こりにくい栄養素ではありますが、普段からしっかりと摂れているのか気になりますよね。
厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」において、ビタミンAの摂取基準を以下のとおり定めています。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 耐容上限量 | 推定平均必要量 | 推奨量 | |
1~2歳 | ||||||
3~5歳 | ||||||
6~7歳 | ||||||
8~9歳 | ||||||
10~11歳 | ||||||
12~14歳 | ||||||
15~17歳 | ||||||
18~29歳 | ||||||
30~49歳 | ||||||
50~64歳 | ||||||
65~74歳 | ||||||
75歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
なお、1歳未満の乳児に対しては目安量と耐容上限量が定められています。
性別 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
年齢 | 目安量 | 耐容上限量 | 目安量 | 耐容上限量 |
0〜5月 | ||||
6〜11月 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
同じく厚生労働省が行った「令和元年 国民健康・栄養調査」によると、ビタミンAの平均摂取量は20歳以上の男性で564μgRAE、女性で532μgRAEです[1]。
男性は推定平均必要量に届いておらず、女性は推定平均必要量を超えているものの推奨量には届いていないことが分かりますね。
ちなみに妊婦・授乳婦の方については以下のとおりに付加量が決められています。
【妊婦・授乳婦のビタミンA(レチノール活性当量)の1日当たりの摂取付加量】
推定平均必要量 | 推奨量 | ||
---|---|---|---|
妊婦 | 初期・中期 | ||
後期 | |||
授乳婦 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成
妊娠初期・中期の方はビタミンAの摂取量を増やす必要はありませんが、妊娠後期や授乳婦の方は意識してビタミンAを摂取した方が良いでしょう。
[1] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査報告」
5.ビタミンAを含む食べ物や効果ついてのまとめ
ビタミンAは脂溶性ビタミンの一つで、目の機能や皮膚・粘膜の状態を正常に維持するために必要な栄養素です。
鶏・豚レバーなどの動物性食品のほか、プロビタミンAを含む緑黄色野菜などの植物性食品からも摂取できます。
あまりに多く摂取すると健康に影響がおよぶ危険性がありますが、通常の食事からの摂取であれば心配する必要はありません。
むしろ日本人はビタミンAがやや不足しがちな傾向にあります。
普段の食事に取り入れやすい食品からも摂取できる栄養素なので、ぜひ今日から意識して献立を考えてくださいね。