栄養素

クロムとは?体内でのはたらきや摂取目安量、摂取源の食べ物を紹介

メディパレット編集部

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クロムとは?体内でのはたらきや摂取目安量、摂取源の食べ物を紹介

「クロムってどんな栄養素なんだろう?」

「クロムを摂取するには何を食べれば良いのかな?」

クロムは重要な栄養素だと聞いたことがあっても、どんなはたらきをしているのか、何に含まれているのかまでは分からないという方も多いでしょう。

クロムは糖質や脂質、たんぱく質の代謝に関わるミネラルです。

またインスリンという血糖値を下げるホルモンのはたらきを助ける作用があります。

この記事ではクロムのはたらきと過不足による影響を解説し、1日に摂取すべき量やクロムを多く含む食品もご紹介します。

クロムを日々の食生活で摂取する際の参考にしてくださいね。

1.クロムとは

さざえ

「クロムってどんな栄養素なのかな?」

クロムは必須ミネラルの一種です。

ミネラルとは
ヒトの体を構成する元素のうち、酸素、炭素、水素、窒素以外の元素のことです。そのうち栄養素として食事から摂取する必要がある16種類は必須ミネラルと呼ばれています[1]。必須ミネラルの代表例としてはナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄などが挙げられます。

【関連情報】 「ミネラルとは?体に必要な理由と豊富に含まれる食べ物を種類別に紹介」についての記事はこちら

クロムは動物や植物をはじめ、岩石や土壌、火山灰などにも広く存在する金属元素です。

クロムには「3価クロム」「6価クロム」「金属クロム」の三つの形態があります。

自然界に存在するクロムのほとんどは3価クロムで、ヒトが栄養素として摂取するのもこの3価クロムです。

このためこの記事でも3価クロムについて解説します。

メモ
6価クロムと金属クロムは工業的に製造されるものです。6価クロムはめっきや顔料、防腐剤などに、金属クロムはステンレス鋼などの製造に用いられます。

食品に含まれる3価クロムの吸収率は1%未満といわれており、体内に存在するクロムもごく微量です[2]。

しかしクロムは糖質、脂質、たんぱく質などの代謝に関わり、重要なはたらきをしています

代謝とは
栄養素をエネルギーや生命維持に必要な物質に変えるはたらきのことです。

クロムは特に「インスリン」の作用を強めるはたらきをし、糖質の正常な代謝を維持していることが分かっています。

インスリンとは
糖質の代謝を調節し、血糖値を下げる作用を持つ唯一のホルモンです。食後に血糖値が上昇するとそれに反応して膵臓(すいぞう)から分泌され、血糖を細胞にエネルギー源として使わせます。また使い切れなかった糖を脂肪として蓄えるはたらきを促進します。

糖尿病はインスリンの分泌量が低下したり、効きが悪くなったりすることで血糖値が高い状態が続く病気です。

3価クロムサプリメントを糖尿病患者に投与した結果、血糖値などの改善が見られたという研究結果があります[2]。

メモ
ただし、糖尿病予防の効果が認められているわけではありません。

なお、クロムは加齢と共に体内に存在する量が減少する唯一のミネラルですが、それによって体の機能に問題が生じることはありません。

メモ
クロムを体に欠かせない栄養素ではないとする説が有力になっており、厚生労働省はクロムの扱いの見直しも含めて状況を注視する必要があるとしています。

[1] 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識

[2] 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2020年版)

2.クロムの過不足による悪影響

「クロムが不足するとどうなるんだろう?」

「クロムを摂取し過ぎたら健康に悪いのかな……」

クロムは通常の食生活を送っている分には不足や過剰摂取の可能性はほとんどありません。

しかし病気の治療やサプリメントの使用などによって過不足が生じる場合があります

この章では、クロムの不足や過剰摂取によって引き起こされる悪影響について解説します。

2-1.クロムが不足した場合

点滴

クロムは多くの食品に含まれているため、通常の食生活において悪影響が起こるほど不足する心配はありません

クロムが不足するのは、病気などで食品を口から摂取できず、長期間にわたって静脈から栄養を投与する場合です。

クロムが不足するとインスリンの作用が低下する他、体重の減少や糖質、脂質、たんぱく質の代謝異常、角膜障害や末梢(まっしょう)神経障害などが起こる恐れがあります

こうした症状はクロムを補給することで改善します。

2-2.クロムを過剰摂取した場合

サプリメント

通常ヒトが摂取する3価クロムは毒性が低く、吸収率も1%未満と低いため、通常の食生活において過剰摂取が問題になることはほとんどありません[3]。

ただしサプリメントを長期間使用し続けた場合などに悪影響が生じる恐れがあるため注意が必要です。

クロムを過剰摂取した場合は疲労感や嘔吐(おうと)、下痢、腹痛、筋肉のけいれん、腎尿細管障害、肝障害などが起こる可能性があります

メモ
6価クロムは3価クロムと違って強い毒性を持ち、皮膚炎や肺がんの原因となります。

[3] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)

3.クロムの食事摂取基準

「クロムはどれくらい摂取すれば良いのかな?」

日々の食生活においてどの程度クロムを摂取すれば良いか、気になる方もいらっしゃるでしょう。

厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」において、乳児に対してはクロムの目安量を、成人に対しては目安量と耐容上限量を設定しています。

【クロムの1日当たりの食事摂取基準(μg)】
性別 男性 女性
性別 目安量 耐容上限量 目安量 耐容上限量
0~5カ月
0.8
-
0.8
-
6~11カ月
1.0
-
1.0
-
1~2歳
-
-
-
-
3~5歳
-
-
-
-
6~7歳
-
-
-
-
8~9歳
-
-
-
-
10~11歳
-
-
-
-
12~14歳
-
-
-
-
15~17歳
-
-
-
-
18~29歳
10
500
10
500
30~49歳
10
500
10
500
50~64歳
10
500
10
500
65~74歳
10
500
10
500
75歳以上
10
500
10
500

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成

メモ
目安量は一定の栄養状態を維持するのに十分な量で、この量以上を摂取していれば不足の心配はほとんどありません。耐容上限量は過剰摂取による健康障害の回避を目的に設定された量です。

ただし乳児の耐容上限量、1〜17歳の目安量、耐容上限量については根拠が乏しいために設定されていません。

厚生労働省の「令和元年 国民健康・栄養調査」ではクロムの平均摂取量は調査されておらず、日本人のクロム摂取量は不明です。

一方で、文部科学省の「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」をもとにした推計では、日本人のクロム摂取量は1日当たり約10μgとされています[4]。

この推計に基づくと、日本人は日々の食生活で過不足なくクロムを摂取できているといえるでしょう。

[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)

4.クロムの摂取源となる食品

「クロムはどんな食品に含まれているのかな?」

クロムをしっかり摂取したいという方もいらっしゃるでしょう。

クロムは藻類やきのこ類をはじめ、魚介類や肉類、卵、穀類などに幅広く含まれます

この章では植物性食品と動物性食品に分けてクロムの摂取源となる食品をご紹介します。

4-1.植物性食品

あおさ

クロムはあおさなどの藻類や調味料、アサイー、チョコレートなどに多く含まれています。

【クロムを多く含む植物性食品と可食部100g当たりの含有量】

食品名 加工状態など 含有量
あおさ 素干し 160μg
アサイー 冷凍 60μg
梅干し 塩漬 37μg
刻み昆布 - 33μg
黒こしょう 30μg
きくらげ 乾燥 27μg
ミルクチョコレート - 24μg
まつたけ 14μg
黒砂糖 - 13μg
きな粉(黄大豆) - 12μg
油揚げ 5μg
水菜 3μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

一部を除いて多く食べることが難しい食品が並びますが、必要とされる量が少ないためそこまで気にする必要はありません。

4-2.動物性食品

ハム

クロムは魚介類や肉類などに幅広く含まれています。

【クロムを多く含む動物性食品と可食部100g当たりの含有量】

食品名 加工状態など 含有量
豚ロースハム - 12μg
ビーフジャーキー - 11μg
さざえ 6μg
鶏つくね - 4μg
あさり 3μg
ほたて貝柱 3μg
さつま揚げ - 3μg
豚ロース肉 3μg
かき 3μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

一種類の食品からの摂取を目指すのではなく、多くの品目からバランス良く摂取できるように献立を工夫すると良いでしょう。

5.クロムについてのまとめ

クロムは自然界に広く存在する元素で、必須ミネラルの一種です。

糖質や脂質、たんぱく質の代謝に関わる重要なはたらきをしています。

特に糖質の正常な代謝を維持しており、血糖値を下げるインスリンの作用を強めると考えられています

クロムは幅広い食品に含まれているため、通常の食生活で不足する心配はありません。

またサプリメントを大量に長期間服用するような場合を除き、過剰摂取による体調への悪影響はほぼありません。

クロムの成人の摂取目安量は1日10μgで[5]、日本人の食生活で過不足なく摂取できていると推測されています

クロムは藻類やきのこ類、チョコレートなどに特に多く含まれています。

この記事の内容を参考に、日々の食生活でクロムを過不足なく摂取してくださいね。

[5] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)

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