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ビタミンAとは?はたらきや適切な摂取量、摂取源となる食品を紹介

メディパレット編集部

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ビタミンAとは?はたらきや適切な摂取量、摂取源となる食品を紹介

「ビタミンAってどんな栄養素なんだろう?」

「ビタミンAはどんな食べ物に含まれているのかな?」

ビタミンAが健康に重要であることは漠然と理解していても、どんなはたらきをするのかを詳しく知っている方は多くはないでしょう。

ビタミンAは目や皮膚、粘膜を正常に維持するために必要な栄養素です。

不足すると目の機能に不調を来す恐れがあるため、過不足なく摂取したいものですね。

この記事では、ビタミンAはどのような栄養素なのかを詳しくご説明します。

またビタミンAの過不足による影響や適切な摂取量、ビタミンAの摂取源となる食べ物についても解説します。

1.ビタミンAとは

ビタミンAは脂溶性ビタミンの一種です。

ビタミンとは人体の機能を正常に保つために食事から摂取する必要のある有機化合物の総称です。

全部で13種類存在し、脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分けられます[1]。

ビタミンの種類

ビタミン、脂溶性ビタミンについてはそれぞれ以下の記事で詳しくご紹介しているのでぜひ参考にしてみてくださいね。

ビタミンとは?13種類のビタミンのはたらきと食事摂取基準を紹介

脂溶性ビタミンとは?はたらきや食事摂取基準、摂取源の食品を紹介

体内のビタミンAは目の正常な機能を維持するはたらきをしています

また、皮膚や粘膜を正常に保つために作用します

さらに成長や細胞の分化といったはたらきにも関わっているのです。

ビタミンAは活性酸素のはたらきを抑える抗酸化ビタミンとしても知られています

メモ
活性酸素は呼吸で取り込まれた酸素が通常よりも活性化されたものです。微量であれば免疫機能や細胞伝達物質として有用ですが、増え過ぎると細胞を傷つけ、がん、心血管疾患、生活習慣病などさまざまな疾患の原因となります。このため体内には活性酸素に対抗する物質をつくったり、抗酸化作用を持つ物質を利用したりして、活性酸素によるダメージに対抗する機能が備わっています。

体内ではたらくビタミンAには、レチノール、レチナール、レチノイン酸の3種類があります。

また食品のなかには、体内でビタミンAとして作用する物質に変換されるプロビタミンAを含むものもあります。

プロビタミンAの代表例としては、カロテノイドが挙げられます。

プロビタミンAカロテノイドは約50種類存在し、主なものはβ-カロテンやα-カロテン、β-クリプトキサンチンなどです[2]。

なかでも代表的なプロビタミンAであるβ-カロテンは、活性酸素の発生を抑え、取り除くはたらきがあります

なお食品中のビタミンA含有量は一般的にレチノール活性当量で表されます

これはレチノールの含有量に、プロビタミンAから変換されるレチノールの量を足したものです。

メモ
食品中のレチノール活性当量は「レチノール(μg)+β-カロテン(μg)×1/12+α-カロテン(μg)×1/24+β-クリプトキサンチン(μg)×1/24+その他のプロビタミンAカロテノイド(μg)×1/24」という式で求められます[2]。

[1] 厚生労働省 健康づくりサポートネット「ビタミン

[2] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)

2.ビタミンAの不足と過剰摂取による影響

「ビタミンAが不足すると、体にどんな悪影響があるのかな?」

「ビタミンAを多く摂り過ぎるとどうなるんだろう?」

ビタミンAは体に必要な栄養素であるため、不足すると悪影響が出るのではないかと不安になりますよね。

またいくら必要な栄養素であっても、必要以上に摂り過ぎるとかえって良くないのではないかと思われる方もいらっしゃるでしょう。

ここではビタミンAの不足と過剰摂取による影響についてご紹介します。

2-1.ビタミンAの不足による影響

女性の目元アップ

ビタミンAは体内では肝臓に大量に蓄えられており、血中のビタミンAの濃度は肝臓のビタミンA貯蔵量がかなり減るまで低下しません。

このため、ビタミンAの不足による不調はよほど長期にわたってビタミンAを含まない食事を摂り続けない限り生じる危険性は低いとされています

しかしビタミンAが不足すると、目の角膜や粘膜がダメージを受けてしまいます

このためビタミンAの欠乏症として、暗いところでものが見えづらくなる夜盲症がよく知られています。

症状が悪化すると、視力低下や失明に至る場合もあるため注意が必要です。

発展途上国ではビタミンA不足により失明する子どもたちも多く存在します。

さらに過度なアルコール摂取が肝臓に貯蔵されているビタミンAを消耗させ、欠乏症を起こす場合もあるため、飲酒の習慣がある方は気をつけたいものですね。

他に、軽微なビタミンA欠乏症として免疫機能の低下が見られるケースがあります。

2-2.ビタミンAの過剰摂取による影響

みかん

ビタミンAは脂溶性であり、水溶性ビタミンのように過剰に摂取した分が尿として排せつされることがありません

このため、摂り過ぎると体内に蓄積されて健康障害を引き起こす恐れがあります

ただし、プロビタミンAからレチノールへの変換は必要に応じて行われるため、通常の食事からプロビタミンAを大量に摂取したことで起こる過剰症は「柑皮症(かんぴしょう)」を除きほとんどないといわれています。

柑皮症とは
みかんなどからカロテノイドを多量に摂取することにより、カロテノイドが角質や表皮、皮下脂肪などに沈着し、皮膚が黄色っぽくなってしまう症状のことです。原因となった食品の摂取をやめれば改善し、健康に害はないとされています。

一方で、サプリメントから短期的にβ-カロテンを多量に摂取した場合、成人では吐き気や目まい、頭痛、目のかすみなどが起こることが分かっています。

また長期の過剰摂取では、成人では中枢神経への影響や肝臓の異常、骨や皮膚の変化が見られています

さらに子どもの場合は頭蓋内や骨格の異常、妊婦の場合は胎児の奇形を引き起こすことがあります。

サプリメントなどでビタミンAを摂り過ぎないよう注意したいですね。

3.ビタミンAの適切な摂取量と平均摂取量

「ビタミンAは1日にどれくらい摂るのが適切なのかな?」

体に必要な栄養素であるビタミンAを、過不足ない量を摂取したいものですよね。

そこで、ここではビタミンAの適切な摂取量と平均摂取量をご紹介します。

3-1.ビタミンAの適切な摂取量

ビタミンAには1歳以上に対して推定平均必要量と推奨量が設定されています

また耐容上限量は0カ月以上の全年代に対して設定されており、0〜11カ月に対しては目安量が設定されています

推定平均必要量はその層における半数の人が必要量を満たす量です。

これに対し、推奨量はその層におけるほとんどの人にとって十分だと考えられる量を指します。

目安量は、推定平均必要量と推奨量を設定する十分な科学的根拠が得られない場合に設定されます。

耐用上限量は健康障害をもたらすリスクがないとされる習慣的な摂取量の上限として設定されているものです。

詳細な量については以下の表をご参照ください。

【ビタミン A の食事摂取基準(μgRAE/日)】
※横にスクロールできます
性別 男性 女性
年齢など 推定平均 必要量 推奨量 目安量 耐容 上限量 推定平均 必要量 推奨量 目安量 耐容 上限量
0~5カ月
-
-
300
600
-
-
300
600
6~11カ月
-
-
400
600
-
-
400
600
1~2歳
300
400
-
600
250
350
-
600
3~5歳
350
450
-
700
350
500
-
850
6~7歳
300
400
-
950
300
400
-
1,200
8~9歳
350
500
-
1,200
350
500
-
1,500
10~11歳
450
600
-
1,500
400
600
-
1,900
12~14歳
550
800
-
2,100
500
700
-
2,500
15~17歳
650
900
-
2,500
500
650
-
2,800
18~29歳
600
850
-
2,700
450
650
-
2,700
30~49歳
650
900
-
2,700
500
700
-
2,700
50~64歳
650
900
-
2,700
500
700
-
2,700
65~74歳
600
850
-
2,700
500
700
-
2,700
75歳以上
550
800
-
2,700
450
650
-
2,700

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

また妊婦、授乳婦は上記に対して付加量があります。

【ビタミン A の妊婦・授乳婦の付加量(μgRAE/日)】
推定平均必要量 推奨量
妊婦 初期
+0
+0
中期
+0
+0
後期
+60
+80
授乳婦
+300
+450

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成

ご自身の年齢や状態に応じて、適切な量の摂取を心掛けましょう。

3-2.ビタミンAの平均摂取量

次に、日本人のビタミンAの平均摂取量をご紹介します。

以下の表を参考にしてみてくださいね。

【ビタミンAの平均摂取量(μgRAE/日)】
年齢 男性 女性
1〜6歳
356
345
7〜14歳
532
491
15〜19歳
529
446
20〜29歳
451
447
30〜39歳
474
409
40〜49歳
555
458
50〜59歳
528
543
60〜69歳
596
604
70〜79歳
612
591
80歳以上
642
530

厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」をもとに執筆者作成

以上の表から、厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」の結果では、男女共に15歳以上の全年代で平均摂取量が推奨量を下回っていることが分かります。

4.ビタミンAの摂取源となる食べ物

「ビタミンAはどんな食べ物に多く含まれているのかな?」

ビタミンAを意識的に摂取しようと考えたとき、どのような食品に多く含まれているかは気になりますよね。

ここではビタミンAの摂取源となる主な食べ物を、動物性食品・植物性食品に分けてご紹介します。

メモ
この章でご紹介する食品は食品表示基準にのっとって100g当たりのビタミンA含有量が「豊富である」と表現できるものです[3]。

またビタミンAを多く含む食べ物については以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてくださいね。

ビタミンAを多く含む食べ物は?効果や摂取基準についても詳しく解説

[3] 東京都保険医療局「栄養成分表示ハンドブック

4-1.ビタミンAの摂取源となる動物性食品

レバーの料理

ビタミンAを多く含む動物性食品には主に以下のようなものがあります。

【ビタミンAを含む動物性食品と可食部100g当たりのビタミンA含有量(レチノール活性当量)(μgRAE/日)】
食品名 加工状態など 含有量(μgRAE)
鶏レバー
14,000
豚レバー
13,000
あん肝
8,300
うなぎ(かば焼き)
-
1,500
ぎんだら
1,500
ほたるいか
1,500
牛レバー
1,100
くろまぐろ(養殖、赤身)
840
鶏ハツ
700
うずら卵(水煮缶詰)
-
480
イクラ
-
330
モッツァレラチーズ
-
280
クリームチーズ
-
250

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

レバーやハツ、魚の肝などに多く含まれていることが分かりますね。

ビタミンAは脂溶性ビタミンであるため、油に溶けることで吸収率が上がるという性質があります

例えばレバーと、同じくビタミンAを多く含むにらを油炒めにすれば、さらにビタミンAを効率良く摂取することができるでしょう。

またオリーブオイルや酢、こしょうなどを混ぜたものにビタミンAを含むクリームチーズを入れれば、栄養価の高いドレッシングになりますよ。

うなぎのかば焼きやくろまぐろの刺身のようにそのまま食べられるものもあるので、料理するのが苦手な方でも食卓に取り入れやすいでしょう。

さまざまな食品や調理方法などを試しながら、日々の食事に取り入れてみてくださいね。

4-2.ビタミンAの摂取源となる植物性食品

にんじん2本

ビタミンAを含む植物性食品には主に以下のようなものがあります。

【ビタミンAを含む植物性食品と可食部100g当たりのビタミンA含有量(レチノール活性当量)(μgRAE/日)】
食品名 加工状態など 含有量(μgRAE)
焼きのり
乾燥
2,300
モロヘイヤ
840
にんじん
630
しゅんぎく
380
ほうれん草
350
トウミョウ
340
サンチュ
320
ミックスベジタブル
冷凍
320
露路メロン(赤肉種)
300
にら
290
小松菜
260
西洋かぼちゃ
210
チンゲンサイ
170

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

このように、ビタミンAは特に緑黄色野菜に含まれています。

モロヘイヤはなじみがない方もいらっしゃるかもしれませんが、おひたしなどで食べられることが多い食品です。

β-カロテンは加熱調理することで吸収が高まるため、おひたしのように火を通す調理方法はおすすめです。

またにんじんはサラダや煮物、スープ、あえ物、ソテーや揚げ物などさまざまな調理方法で他の食品と合わせやすいため、使い勝手が良く飽きずに食べることができるでしょう。

加熱調理以外にも、脂溶性ビタミンであるビタミンAは油を使った調理方法で吸収収率がアップするため、ぜひ試してみてくださいね。

5.ビタミンAについてのまとめ

ビタミンAは脂溶性ビタミンの一種です。

体内では目の機能や皮膚、粘膜を正常に維持するはたらきをしており、また成長や細胞の分化の機能にも関わります

またビタミンAは抗酸化ビタミンと呼ばれ、活性酸素のはたらきを抑えるはたらきをします

ビタミンAは肝臓に大量に貯蔵されているため、よほど継続的にビタミンAを摂取しない限りは不調は起こりにくいとされています。

しかし不足すると目の機能を低下させ、夜盲症や視力低下、失明などを起こす恐れがあるため注意が必要です。

一方、通常の食品からであれば過剰摂取による悪影響は柑皮症以外起こりにくいとされています。

ただしサプリメントから短期的に多量に摂取した場合には、吐き気や目まい、頭痛、目のかすみなどを起こすことが知られています

厚生労働省の調査では、日本人のビタミンAの平均摂取量は15歳以上の全年代で推奨量を下回っていることが分かっています。

ビタミンAは動物性食品ではレバーやハツ、魚の肝、植物性食品では特に緑黄色野菜に含まれています

毎日の食事から過不足ない摂取を心掛け、健康を保ちたいものですね。


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執筆者 メディパレット編集部

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