「ビタミンCって体に良さそうだけど、どんな栄養素なんだろう?」
ビタミンCについて何となく体に良いイメージはあっても、具体的なはたらきまでは知らないという方も多いのではないでしょうか。
ビタミンCは肌や粘膜の健康を維持するとともに強い抗酸化作用を持つ重要な栄養素です。
体内でつくることができないため、不足しないよう食品から摂取する必要があります。
この記事では、ビタミンCのはたらきや摂取源についてご紹介します。
過不足による影響や適切な摂取量についても解説するので、健康維持に役立ててくださいね。
1.ビタミンCの体内でのはたらき
ビタミンCは体の機能を正常に保つはたらきを持つビタミンの一種で、アスコルビン酸とも呼ばれます。
体内でつくることができないため食べ物から摂取する必要があります。
体内に取り込まれたビタミンCは血液などの体液に溶け込み、さまざまなはたらきをします。
この章ではビタミンCのはたらきについて詳しく解説します。
1-1.コラーゲンの合成に関わる
ビタミンCはコラーゲンの合成に欠かせない栄養素です。
コラーゲンは体をつくる「たんぱく質」の一種で、細胞と細胞をつなぐ接着剤のような役割をしています。
皮膚の潤いや弾力、ハリを保ったり、キメを細かくしたりといったはたらきを持つため、美容成分としても期待されています。
コラーゲンには他にも血管に弾力を持たせる、骨や筋肉などを丈夫に保つ、傷の修復を促すといった健康維持にも深く関わるはたらきがあります。
コラーゲンは酵素のはたらきにより体内でつくられますが、この酵素はビタミンCがないとはたらきません。
ビタミンCはコラーゲンの合成に関わる重要な栄養素といえますね。
1-2.活性酸素を除去する
ビタミンCには活性酸素を除去するはたらきがあります。
活性酸素は酸化作用が強く、過剰につくられると細胞にダメージを与えます。
活性酸素が体内で常につくられているのにもかかわらず健康を維持できるのは、ビタミンCなどの「抗酸化物質」がはたらいているからです。
ビタミンCは強い抗酸化作用を持ち、自らが酸化されることで活性酸素から細胞を守っているのです。
加えて、同じ抗酸化物質としてはたらくビタミンEと協力して活性酸素を除去することも分かっています。
1-3.黒色メラニンを抑制・還元する
ビタミンCには黒色メラニンの生成を抑えたり還元(無色化)したりする作用があります。
黒色メラニンは紫外線などの刺激を受け産生され、表皮に沈着するとシミやそばかすが生じます。
ビタミンCにはこの黒色メラニンの発生を抑えるはたらきがあり、シミやそばかすを予防する効果が期待できるのです。
またつくられた黒色メラニンを無色化する作用もあり、生じたシミを薄くする効果も期待できます。
1-4.鉄の吸収を促進する
ビタミンCにはミネラルの一種である鉄の吸収を促す作用があります。
食品中に含まれる鉄はたんぱく質と結合したヘム鉄と、結合していない非ヘム鉄に分けられます。
このうち非ヘム鉄はヘム鉄よりも体内での吸収率が低いのですが、ビタミンCはこの非ヘム鉄の吸収を促してくれます。
鉄のはたらきや多く含む食品については以下の記事で解説しています。
鉄分とは?はたらきや食事摂取基準、多く含まれる食品などを紹介
2.ビタミンCの不足と過剰摂取による影響
ビタミンCの不足や過剰摂取は健康にさまざまな悪影響をもたらします。
ビタミンCは体内で合成できないため食べ物から摂取する必要があります。
そのため食事が偏るとビタミンCが不足することがあるので注意が必要です。
一方で、サプリメントなどの過剰摂取にも気を付けましょう。
ここではビタミンCの不足や過剰摂取で生じる影響について解説します。
2-1.ビタミンCの不足による影響
ビタミンCが不足すると倦怠(けんたい)感、疲労感、気力低下などの症状が現れます。
また貧血になりやすかったり風邪をひきやすくなったりします。
さらにビタミンCが不足した状態が続くと壊血病を発症します。
壊血病は血管がもろくなり出血しやすくなる病気です。
歯ぐき(歯茎)や皮下組織の出血、貧血、筋肉の減少、心臓の障害、呼吸困難などの症状を引き起こします。
ビタミンCの不足はアルコール依存症の人や野菜・果物の摂取が少ない人、食事に極端な偏りがある人、特定の病気を患っている人や高齢者、薬物への依存がある人などに多く見られます。
また喫煙者(受動喫煙を含む)は非喫煙者に比べビタミンCの必要性が高いことが分かっています。
2-2.ビタミンCの過剰摂取による影響
通常の食事で体内のビタミンCが多くなり過ぎることはほとんどありません。
これはビタミンCが水に溶けやすく、血液などの体液に溶け込んで余分なものは尿として排出されるためです。
しかしサプリメントなどでビタミンCを摂り過ぎた場合には、吐き気や下痢、腹痛が生じることがあります。
また腎機能が低下している人は尿路結石ができやすくなるためビタミンCの摂り過ぎには気を付けましょう。
3.ビタミンCの適切な摂取量と平均摂取量
「ビタミンCってどれくらい摂れば良いのかな……」
ビタミンCの適切な摂取量が気になるという方もいらっしゃるかもしれませんね。
健康を維持するためには適切な摂取量を知り、十分に摂取することが大切です。
ここではビタミンCの適切な摂取量と平均摂取量についてそれぞれ解説します。
3-1.ビタミンCの適切な摂取量
厚生労働省はビタミンCの摂取基準を設けています。
ビタミンCの摂取基準として、1歳未満に対し「目安量」、1歳以上に対し「推定平均必要量」と「推奨量」が設定されています。
ビタミンCの1日当たりの摂取基準は男女共に次のとおりです。
年齢 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 |
---|---|---|---|
1歳未満 | |||
1~2歳 | |||
3~5歳 | |||
6~7歳 | |||
8~9歳 | |||
10~11歳 | |||
12~64歳 | |||
65歳以上 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
妊娠中、授乳中の方には上記に加え、次の付加量が設定されています。
推定平均必要量 | 推奨量 | |
---|---|---|
妊婦 | ||
授乳婦 |
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」をもとに執筆者作成
ビタミンCの摂取基準は抗酸化作用や心臓血管系の病気の予防が期待できる量として示されています。
また上記の表を参考に、食品から十分な量のビタミンCを摂取することを基本とし、食品以外からの摂取について、1日当たり1,000mgを超える量の摂取は推奨していません[1]。
なお壊血病は1日当たり10mg程度のビタミンCを摂取していれば予防できるとされています。
[1] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
3-2.ビタミンCの平均摂取量
「普段の食事で十分なビタミンCを摂れているのかな……」
このように気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
厚生労働省の令和元年 国民健康・栄養調査によるビタミンCの摂取状況は次のとおりです。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
1~6歳 | ||
7~14歳 | ||
15~19歳 | ||
20~29歳 | ||
30~39歳 | ||
40~49歳 | ||
50~59歳 | ||
60~69歳 | ||
70~79歳 | ||
80歳以上 |
[10] 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」
このように多くの年代で推奨量に届いていません。
日頃から意識してビタミンCを摂るようにしたいですね。
次の章ではどんな食べ物にビタミンCが含まれているのかを解説します。
4.ビタミンCの摂取源となる食べ物
ビタミンCは野菜類や果物類、いも類、海藻類などに含まれています。
ここでは特に優れた摂取源である野菜類や果物類をご紹介します。
4-1.野菜類
野菜類はビタミンCの主要な摂取源です。
なかでもビタミンCが豊富に含まれているものをご紹介します。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
赤ピーマン(パプリカ) | ||
オレンジピーマン(パプリカ) | ||
黄ピーマン(パプリカ) | ||
ブロッコリー | ||
カリフラワー | ||
トウミョウ | ||
ピーマン | ||
紫キャベツ(レッドキャベツ) | ||
モロヘイヤ | ||
れんこん | ||
西洋かぼちゃ | ||
小松菜 | ||
キャベツ |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
このように野菜でも特に緑黄色野菜に多く含まれています。
ビタミンCは調理によって減少しやすい栄養素のため、サラダなど生の状態での摂取が効率的です。
加熱する場合は、蒸したり電子レンジで調理したりすると失われるビタミンCを抑えることができるといわれています。
4-2.果物類
果物類もビタミンCの優れた摂取源です。
特に柑橘類に豊富に含まれています。
食品名 | 加工状態など | 含有量 |
---|---|---|
キウイフルーツ(黄肉種) | ||
レモン(全果) | ||
キウイフルーツ(緑肉種) | ||
甘がき | ||
ドライマンゴー | ||
いちご | ||
ネーブルオレンジ | ||
グレープフルールジュース(濃縮還元) | ||
パパイア(完熟) | ||
バレンシアオレンジジュース(濃縮還元) | ||
きよみオレンジ | ||
パインアップル | ||
うんしゅうみかん(早生) |
文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成
ビタミンCの含有量は出回る時期によって異なる場合があるため、なるべく旬のものを選びましょう。
ただし、果物は野菜に比べて糖質を多く含んでいるため摂り過ぎには注意が必要です。
5.ビタミンCについてのまとめ
ビタミンCは水溶性ビタミンの一種で、体内で合成できないため食品から摂取する必要があります。
コラーゲンの合成に関わるため、肌や粘膜の健康を保つためには欠かせません。
また強い抗酸化作用を持ち、活性酸素から細胞を守っています。
その他メラニンの発生を抑えてシミやそばかすを予防したり、鉄の吸収を高めたりといった作用もあります。
偏った食事などでビタミンCが不足すると倦怠感、疲労感、気力低下などの症状が現れ、不足した状態が続くと壊血病を発症します。
また通常の食事でビタミンCを摂り過ぎることはほとんどないものの、サプリメントなどの過剰摂取により吐き気や下痢、腹痛が生じることがあります。
心臓血管系の病気の予防を目指してビタミンCの摂取基準が設けられていますが、現状では多くの年代でこの摂取基準を下回っています。
ビタミンCは野菜類や果物類を摂取源とし、なかでも緑黄色野菜や柑橘類に多く含まれています。
調理によって失われやすい栄養素であるため、サラダなど生のまま食べると効率的に摂取できます。
加熱する場合は、蒸したり電子レンジを使ったりすることで失われる栄養素を抑えることができるといわれています。
また季節ごとに旬のものを取り入れるのもポイントです。
この記事を参考に、日々の食事で効率良くビタミンCを摂取するために役立ててくださいね。