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セレンはどんなミネラル?はたらきや1日当たりの摂取量について解説

メディパレット編集部

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セレンはどんなミネラル?はたらきや1日当たりの摂取量について解説

「セレンって一体何だろう?」

「セレンは体に必要って聞いたけど、どんなはたらきがあるのかな……」

セレンという名称を聞いても、具体的にどういう栄養素なのか分からないという方が多いのではないでしょうか。

セレンは人体に欠かせないミネラルの一つで、老化やがんなどの生活習慣病を引き起こす活性酸素から体を守るはたらきがあります

一方で強い毒性を持ち、過剰摂取に注意が必要な物質でもあります

この記事では、セレンの体内でのはたらきや過不足による影響、1日に摂取すべき量に加えて多く含む食品についても解説します。

セレンを過不足なく摂取して健康な日々を送るための参考にしてくださいね。

1.セレンとは?

「セレンってあまり聞かないけど、どんな栄養素なんだろう?」

セレンという言葉にあまりなじみのない方は多いのではないでしょうか。

セレンは人体に欠かすことのできない「必須ミネラル」の一種です。

必須ミネラルとは
人体の栄養素として必須なことが分かっているミネラルのことで、セレンの他にも鉄、銅、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウムなど計16種あります[1]。いずれも体内では合成できず、食品などから摂取する必要があります。

セレンは体内では酵素やたんぱく質の形で存在し、老化や生活習慣病などをもたらす「活性酸素」から体を守る「抗酸化作用」を持つことが知られています。

活性酸素とは
呼吸で体内に取り込まれて活性化された酸素のことで、他の物質と反応しやすい性質を持ちます。活性酸素は大量に生成されると細胞を攻撃してシワ、シミ、老化、免疫低下などを引き起こし、がんや糖尿病、脂質異常症、動脈硬化などの多くの生活習慣病の原因にもなるとされています。

またセレンは「甲状腺ホルモン」の代謝にも関わっています。

甲状腺ホルモンは脈拍数や体温、自律神経などの新陳代謝を活性化し、子どもの体や脳の発育・発達を促進します。

セレンは健康を保ち、若々しく精力的に生きる上で重要な役割を担っているといえるでしょう。

[1] 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識」

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2.セレンの過不足による影響

「セレンが不足したらどうなるんだろう?」

「セレンはたくさん摂り過ぎたら良くないのかな?」

セレンは体に必須なミネラルであると同時に、毒性が強く注意が必要な物質でもあります。

この章では、セレンが不足した場合と過剰摂取した場合にどのような影響が出るのかを説明します。

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2-1.セレンが不足した場合の影響

人の手指の画像

セレンが不足すると、まず筋力低下や筋肉痛、貧血、爪の白色化や変形が起こります

また長期にわたって欠乏が続いた場合、不整脈などを引き起こす心筋症が発症し、死に至る場合もあります

爪の白色化や筋力低下などはセレンの摂取によって治りますが、心筋症は治らない可能性が高いため十分注意が必要です。

他にも、セレンが不足している場合は大腸がん、前立腺がん、肺がん、ぼうこうがん、皮膚がん、食道がん、胃がんの発生リスクが高まることが示されています。

しかしセレン欠乏症は、通常の食事を摂っていれば、まず起こることはありません。

主にセレン欠乏症が起こるのは、食事が摂れず静脈栄養剤や経腸栄養剤を用いている場合や、腎不全患者・透析患者である場合です。

また海外では、土壌のセレン濃度が極端に低い地域の居住者にセレン欠乏症が起こることが報告されています。

メモ
土壌のセレン含有量が極めて低い中国東北部の山岳地帯には、セレン欠乏を主原因として心筋障害を起こす風土病「克山病」が存在し、セレンの投与で予防できることが知られています。

2-2.セレンを過剰摂取した場合の影響

手のひらにのせたサプリメント

セレンには強い毒性があり、体に必要な量と中毒に陥る量の差が極めて小さいため、過剰摂取には十分な注意が必要です。

不適切な量のサプリメントを慢性的に服用した場合などに、過剰摂取に陥る危険があります

セレンを慢性的に過剰摂取すると、脱毛や爪の異常、吐き気や嘔嘔(おうと)、下痢、疲労感、発疹などの皮膚症状、末梢(まっしょう)神経の障害などが起こります。

また吐く息がにんにく臭を帯びることもあります。

大量のセレンを一度に摂取した場合は、震えや立ちくらみ、脱毛などに加えて重症の胃腸障害や神経障害、心筋梗塞、急性の呼吸困難、腎不全、心不全などを引き起こし、死に至る場合もあります。

3.セレンの食事摂取基準と平均摂取量

「セレンはいったいどれくらい摂取すれば良いんだろう?」

セレンは毒性が強いミネラルであるため、どれくらい摂取すれば良いのか気になる方も多いでしょう。

この章では、セレンを1日当たりどの程度摂取すれば良いのか、また日本人は実際にどれくらいセレンを摂取しているのかを解説します。

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3-1.1日当たりの食事摂取基準

厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」において、セレンの摂取基準を以下のように定めています。

【セレンの食事摂取基準(μg/日)】
性別 男性 女性
年齢 推定平均必要量 推奨量 目安量 耐容上限量 推定平均必要量 推奨量 目安量 耐容上限量
0〜5カ月
-
-
15
-
-
-
15
-
6〜11カ月
-
-
15
-
-
-
15
-
1〜2歳
10
10
-
100
10
10
-
100
3〜5歳
10
15
-
100
10
10
-
100
6〜7歳
15
15
-
150
15
15
-
150
8〜9歳
15
20
-
200
15
20
-
200
10〜11歳
20
25
-
250
20
25
-
250
12〜14歳
25
30
-
350
25
30
-
300
15〜17歳
30
35
-
400
20
25
-
350
18~29歳
25
30
-
400
20
25
-
350
30~49歳
25
35
-
450
20
25
-
350
50~64歳
25
30
-
450
20
25
-
350
65~74歳
25
30
-
450
20
25
-
350
75歳以上
25
30
-
400
20
25
-
350

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成

メモ
推定平均必要量は約半数の人の必要を満たす量で、推奨量はほとんどの人にとって十分な量です。目安量は一定の栄養状態を維持するのに十分な量で、この量以上を摂取していれば不足の心配はほとんどありません。耐容上限量は過剰摂取による健康障害の回避を目的に設定された量です。

また妊婦・授乳婦はセレンの必要量が増加するため、付加量が設定されています。

【妊婦・授乳婦の付加量(μg/日)】
推定平均必要量 推奨量
妊婦
+5
+5
授乳婦
+15
+20

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成

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3-2.1日当たりの平均摂取量

日本人の成人のセレンの平均摂取量は1日当たり約100μg である[2]と推定されています。

これは男性の推奨量の約3倍、女性の推奨量の約4倍に当たり、日本人は十分にセレンを摂取しているといえるでしょう。

とはいえ、過剰摂取しないための上限である耐容上限量までには余裕があるため、日々の食生活でセレンの摂取を控える必要はありません

日本の田畑風景

日本人のセレン摂取量が推奨量を上回っている理由は、日本の土壌と食生活にあります

植物や家畜のセレン含有量は、その土地の土壌や飼料のなかのセレン含有量に依存します。

日本の土壌は適度なセレンを含んでいるため、日本で育つ農作物や飼料には相応のセレンが含まれています

また日本人が日々の食生活のなかで、セレンを多く含む魚介類を頻繁に摂取していることも大きな理由です。

加えて日本人が多く消費している小麦製品や肉類には、土壌のセレン濃度の高い北米で採れた小麦や家畜飼料を利用しているものが多いことも理由の一つに挙げられます。

これらの理由が重なることで、日本人のセレン摂取量は十分な水準を保つことができているのです。

[2] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」

4.セレンを多く含む食品

肉料理の画像

「セレンはどんな食品に多く含まれているのかな」

日々しっかりセレンを摂取したいという方もいらっしゃるでしょう。

セレンは魚介類を筆頭に、肉類や穀類などに多く含まれています。

【セレンを多く含む食品と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
たらこ
130μg
まがれい
110μg
くろまぐろ(赤身)
110μg
かつお(秋獲り)
100μg
まつたけ
82μg
まさば
70μg
豚レバー
67μg
ぶり
57μg
牛レバー
50μg
まいわし
48μg
卵黄
47μg
かき(養殖)
46μg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

5.まとめ

セレンは人体に必須なミネラルの一種です。

セレンは老いや生活習慣病をもたらす活性酸素から体を守る抗酸化作用を持ち、代謝を活性化する甲状腺ホルモンにも深く関わっています。

セレンは健康を保ち、若々しく生きるために重要な栄養素といえるでしょう。

しかしセレンは毒性が強いため、サプリメントなどでの過剰摂取には十分注意が必要です。

また日本人は日々の食生活でセレンを十分に摂取できるため、不足を心配する必要はまずありません。

セレンは魚介類や肉類、穀類などに多く含まれているため、若々しく健康でありたいと思う方は日々の食事に意識的に取り入れてみてくださいね。

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