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マグネシウムとは?はたらきや食事摂取基準、摂取源となる食品を解説

メディパレット編集部

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マグネシウムとは?はたらきや食事摂取基準、摂取源となる食品を解説

「マグネシウムってどんな栄養素なんだろう?」

「マグネシウムはどれくらい摂れば良いのかな?」

マグネシウムが栄養素の一つということは知っていても、実際にどんなはたらきがあるのかよく分からない方も多いのではないでしょうか。

マグネシウムは筋肉や神経の機能、血圧の調整や骨の形成などさまざまな作用を持ち、生命維持に欠かせない栄養素といえます。

不足すると高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こす可能性もあると示唆されています。

また通常の食事から過剰に摂取することはあまりないものの、サプリメントの利用では過剰摂取する可能性があり、その場合は下痢などの症状がみられることがあります

この記事ではマグネシウムを過不足なく摂取するためのマグネシウムの食事摂取基準や、摂取できる食品を紹介します。

1.マグネシウムとは?

マグネシウムとは人体に不可欠なミネラルの一つです。

ミネラルとは
無機質とも呼ばれ、生体を構成する酸素、炭素、水素、窒素の四つの主要な元素を除いた全ての元素のことを指します。現在ヒトの体に必要なことが分かっている「必須ミネラル」は16種類あり、マグネシウムはその一つです[1]。

成人の体内には20~30gほどのマグネシウムがあり、そのうちの60%近くが骨や歯に、40%近くが筋肉や脳、神経などに存在しています[2]。

マグネシウムには体内にある約300種類以上もの酵素を助けるはたらきがあり、体内のさまざまな生化学反応や代謝反応と関わっています[2]。

酵素とは
体内で起こるさまざまな化学反応を引き起こすのに必要なたんぱく質のことです。酵素には消化や吸収、細胞の成長などをサポートするはたらきがあり、生命活動を続けるのに欠かせないものばかりです。

またマグネシウムには筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温や血圧の調整するはたらきもあります。

その他にもカルシウムやリンと密接に関係しており、骨の形成や骨の健康維持にも関わっています。

このようにマグネシウムはさまざまな生化学反応や代謝反応を助けているため、摂取量が不足すると高血圧や筋肉のけいれんなど、体にさまざまな影響を及ぼします。

[1] 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター「栄養に関する基礎知識

[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「マグネシウム

2.マグネシウムの食事摂取基準と平均摂取量

「マグネシウムは1日にどれくらい摂ればいいのかな?」

マグネシウムは1日にどれくらい摂取すべきなのか気になりますよね。

ここからはマグネシウムの食事摂取基準と平均摂取量をご紹介します。

食事摂取基準とは
日本国民の健康維持や増進、生活習慣病の予防のために、厚生労働省によって定められた食品のエネルギーや栄養素の摂取基準のことです。

マグネシウムの摂取が不足しがちといわれる日本人の現状を知り、食事摂取基準を守ってマグネシウムを摂取するためにも参考にしてみてくださいね。

2-1.マグネシウムの食事摂取基準

厚生労働省は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」においてマグネシウムの食事摂取基準を設けています。

【マグネシウムの食事摂取基準(mg/日)】
性別 男性 女性
年齢 推定平均必要量 推奨量 推定平均必要量 推奨量
1~2歳
60
70
60
70
3~5歳
80
100
80
100
6~7歳
110
130
110
130
8~9歳
140
170
140
160
10~11歳
180
210
180
220
12~14歳
250
290
240
290
15~17歳
300
360
260
310
18~29歳
280
340
230
280
30~49歳
320
380
240
290
50~64歳
310
370
240
290
65~74歳
290
350
240
280
75歳以上
270
330
220
270

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成

メモ
推定平均必要量は半数の人の必要量を満たせる量で、推奨量はほとんどの人の必要量を満たせる量です。

また1歳未満の乳児に対しては目安量が設定されています。

【マグネシウムの食事摂取基準(mg/日)】
性別 男性 女性
月齢 目安量 目安量
0~5カ月
20
20
6~11カ月
60
60

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」をもとに執筆者作成

目安量とは
一定の栄養状態を維持するのに十分な量のことです。この量以上を摂取していれば不足の心配はほとんどありません。
推定平均必要量とは
摂取不足の回避を目的として、ある特定の集団のうち50%が必要量を満たすとされる摂取量のことです。これに対してほとんどの人が満たす量を「推定量」といいます。

また妊娠中の方の推奨量は年代別に設定された推奨量に40mgが加えられます[3]。

通常の食事からマグネシウムを過剰に摂取することはほとんどないため、通常の食品からの摂取に対する耐容上限量は設定されていません。

耐容上限量とは
栄養素を摂取する際に、健康障害を引き起こすリスクがないとされる習慣的な摂取量の上限のことです。設定された摂取量を超えると過剰摂取による健康障害のリスクが高まると考えられています。

しかし、サプリメントなどから摂取した場合には過剰摂取になる可能性があるため、通常の食品以外から摂取する場合には成人では1日350mg、小児では体重1kg当たり5mgの耐容上限量が設けられています[3]。

過不足なくマグネシウムを摂取するよう心掛けましょう。

[3] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)

2-2.マグネシウムの平均摂取量

日本人のマグネシウムの平均摂取量はどれくらいあるのか気になりますよね。

厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」によると、1日当たりのマグネシウムの平均摂取量は以下のとおりです。

【マグネシウムの1日当たりの平均摂取量(mg)】
年齢 男性 女性
1~6歳
158
143
7~14歳
236
214
15~19歳
239
213
20歳~29歳
227
192
30歳~39歳
236
205
40歳~49歳
251
219
50歳~59歳
265
233
60歳~69歳
286
269
70歳~79歳
298
275
80歳以上
269
236

厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査」をもとに執筆者作成

マグネシウムの食事摂取基準と比較してみると、男女どちらの推奨量も下回っていることが分かります。

なぜ日本人のマグネシウムの平均摂取量が不足しがちなのでしょうか。

それは日本人の食生活の変化が大きく関係していると考えられます。

戦後の食生活の欧米化が始まる以前の日本では、大麦や雑穀などの全粒穀物の摂取量が多く、これらの食品からマグネシウムを摂取していました。

全粒穀物とは
精白していない穀物のことを指します。穀物とは主食として食べられる小麦や稲などのイネ科の植物や、そばやキヌアなどのでんぷんを多く含む植物の種子のことです。「胚芽」「胚乳」「外皮」という三つの部分から構成されますが、一般に流通している穀物は外皮や胚芽の部分が取り除かれています。

しかし、戦後になって精白米やパンを摂取する機会が増えたことで、マグネシウムの摂取量が減ったのではないかといわれています。

また、ミネラルを豊富に含む粗塩の使用頻度が減少したことも要因ではないかと考えられています

昔ながらの製塩法でつくられる塩には、マグネシウムをはじめとするさまざまなミネラルが含まれており、塩からミネラルを摂取することができました。

しかし現在一般的な「イオン交換膜製塩」で作られる精製塩は海水中から純粋な塩化ナトリウムだけを取り出すため、成分のほとんどが塩化ナトリウムでミネラルはあまり含まれていません。

このように全粒穀物や粗塩の使用頻度の減少がマグネシウム不足の一因ではないかと考えられています。

3.マグネシウムの過不足によって生じる健康上の問題

「マグネシウムの過不足によってどのような影響が出るの?」

マグネシウムを摂り過ぎたり、十分に摂取しなかったりすると健康状態にどんな影響が出るのか知らない方も多いのではないでしょうか。

ここからはマグネシウムの摂取不足と過剰摂取のそれぞれの影響をご紹介します。

3-1.マグネシウムの摂取不足によって生じる健康上の問題

マグネシウムの摂取不足は「低マグネシウム血症」を引き起こす恐れがあります。

「血清」中のマグネシウムは通常1.8~2.3mg/dLに維持されていますが[4]、摂取不足や吸収不良・排せつ増大が起こると血清中のマグネシウム量が減少します。

血清とは
血液中の血小板や白血球などの「血球成分」とフィブリノーゲンなどの「血液凝固因子」を除いた上澄みの部分のことです。

血清中のマグネシウム量が減少すると、それを補うために骨にあるマグネシウムが利用されたり、腎臓からのマグネシウムの再吸収が高進したりします。

このように血清中のマグネシウムの再吸収が行われても、血清中マグネシウム濃度が1.8mg/dL未満まで下がってしまうと低マグネシウム血症になります。

低マグネシウム血症になると主に吐き気や嘔吐(おうと)、脱力感、眠気、震え、筋肉の痙攣(けいれん)、食欲不振といった症状が現れます。

また長期にわたってマグネシウムが不足すると骨粗しょう症や糖尿病、心疾患などの生活習慣病を引き起こすリスクが高まることが示唆されていますが、さらなる科学的根拠の蓄積が必要だとされておりまだ確かなことはいえません。

[4] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)

3-2.マグネシウムの過剰摂取によって生じる健康上の問題

お腹をおさえる男性

マグネシウムを過剰に摂取すると、下痢になる場合があります。

通常の食事から摂取するマグネシウムは過剰に摂取しても、尿として排出されるため過剰症として軟便や下痢が生じることはまずありません

しかし、食品以外のサプリメントからマグネシウムを摂取する場合には、過剰摂取に注意が必要です。

そのため食事摂取基準ではサプリメントなどの通常の食品以外から摂取する場合に、成人に対して1日350mgの耐容上限量が設けられています[5]。

また腎機能が低下している場合には、マグネシウムを含む薬剤を摂取することがあるため、血液中のマグネシウム濃度が非常に高くなり「高マグネシウム血症」が引き起こされる場合があります

高マグネシウム血症では吐き気の他、筋力、血圧低下などの症状が起こる可能性があります。

通常の食事で過剰摂取になる心配はありませんが、サプリメントからマグネシウムを摂取している場合には耐容上限量を守って摂取するようにしてくださいね。

[5] 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)

4.マグネシウムを含む食品

「マグネシウムを普段の食事から摂取するには何を食べれば良いんだろう?」

どんな食品にマグネシウムが豊富に含まれているのか分からない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実はマグネシウムは魚介類や藻類、野菜類、豆類、穀類などの食品に多く含まれています

そこでここからはマグネシウムを多く摂取できる食品を動物性食品と植物性食品に分けてご紹介していきます。

マグネシウムを摂取する際の参考にしてくださいね。

4-1.動物性食品

桜えび

動物性食品には肉類と魚介類がありますが、肉類はあまり多くのマグネシウムを含んでいません。

肉類からマグネシウムを全く摂取できないわけではありませんが、動物性食品からマグネシウムを摂取するなら、魚介類から摂取する方が効率良いといえるでしょう。

魚介類のなかでもどんな食品にマグネシウムが含まれているのか見ていきましょう。

【マグネシウムを多く含む魚介類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
干しえび
-
520mg
さくらえび
素干し
310mg
するめ
-
170mg
しらす干し
半乾燥
130mg
イクラ
-
95mg
あさり
92mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

このようにマグネシウムを含む魚介類には、えびや貝類、魚類などがあり、さまざまな食品からマグネシウムを摂取できます

食事の欧米化が進んだことなどにより、日本人の魚介類の消費量は減少傾向にありますが、マグネシウムを摂取するためにも魚介類を日常的に食べるようにしましょう。

4-2.植物性食品

玄米ご飯

マグネシウムを含む植物性食品について見ていきましょう。

マグネシウムの摂取量を食品群別に見てみると、穀類、豆類、野菜類の順番で摂取量が多いことが分かっています

まずはマグネシウムを含む穀類をご紹介します。

【マグネシウムを含む穀類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
キヌア
-
180mg
強力粉(全粒粉)
-
140mg
発芽玄米
-
120mg
玄米
-
110mg
オートミール
-
100mg
干しそば
乾燥
100mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

穀類を摂取するときは普段の白米を意識的に玄米に替えてみると良いでしょう

次にマグネシウムを多く含む豆類や豆製品を見ていきましょう。

【マグネシウムを多く含む豆類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
きな粉(黄大豆)
-
260mg
黄大豆(米国産)
乾燥
230mg
油揚げ
150mg
ひよこまめ
乾燥
140mg
あずき
乾燥
130mg
納豆
-
100mg
黄大豆
ゆで
100mg
がんもどき
-
98mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

豆類を使った食品には納豆や油揚げなど日本人にとってなじみのある食品が多いので、普段の食事に手軽に取り入れられますね。

最後に野菜類のマグネシウム含有量をご紹介します。

【マグネシウムを多く含む野菜類と可食部100g当たりの含有量】
食品名 加工状態など 含有量
切干し大根
乾燥
160mg
ほうれん草
69mg
えだまめ
62mg
ごぼう
54mg
オクラ
51mg
モロヘイヤ
46mg

文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに執筆者作成

このようにマグネシウムはさまざまな食品から摂取できます。

穀類・豆類・野菜類からバランス良くマグネシウムを摂取しましょう。

5.マグネシウムを摂取する際のポイント

「マグネシウムを摂取する際にはどんなことに気を付けたら良いんだろう……」

マグネシウムを摂取する際に気を付けるべきことがあったら知っておきたいですよね。

ここからはマグネシウムを摂取する際のポイントを解説します。

ポイント1 不足する場合はサプリメントで補う

水と錠剤

普通の食材から摂取推奨量分のマグネシウムを摂取するのが難しい方もいらっしゃるかもしれません。

マグネシウムが不足する場合には、サプリメントで補うのも一つの方法です。

ただし、サプリメントからマグネシウムを摂取する場合には、1日の耐容上限量を守らなければいけません。

耐容上限量以上の摂取をすると下痢を起こす可能性があります

サプリメントを摂取した後体調が優れない場合には、使用を中止し医療機関へ報告するようにしましょう。

ポイント2 カルシウムを摂取し過ぎない

グラスに注がれた牛乳

マグネシウムにはカルシウムとともに骨の健康を維持するはたらきがあります。

しかし、カルシウムを摂取し過ぎると、マグネシウムの吸収を妨げてしまう恐れがあります

そのためカルシウムとマグネシウムは摂取バランスが重要です。

カルシウムに対して半分のマグネシウムを摂取するのが、理想的な摂取バランスといわれています。

カルシウムを摂取する際はこの摂取量の比率を守って、カルシウムを摂取し過ぎることがないように気を付けましょう。

6.マグネシウムについて まとめ

マグネシウムは体内の300種類以上もの酵素のはたらきを助け、さまざまな生化学反応や代謝に関わる人体に欠かせないミネラルの一つです[6]。

代表的なはたらきとしてカルシウムと共に歯や骨の形成、筋肉の収縮、その他にも体温や血圧の調整にも関わっています。

マグネシウムは不足すると高血圧や糖尿病、骨粗しょう症などの生活習慣病を引き起こす可能性があるため、食事摂取基準を守ってマグネシウムを摂取する必要があります。

反対に過剰摂取によって下痢や高マグネシウム血症になる可能性もありますが、通常の食事によって過剰摂取になることはまずありません。

マグネシウムは動物性食品なら魚介類、植物性食品なら藻類や穀類、豆類、野菜類などから摂取できるため、さまざまな食品を組み合わせてバランス良くマグネシウムを摂取すると良いでしょう

また通常の食品から摂取推奨量分のマグネシウムを摂取することが理想ですが、難しい場合にはサプリメントなどで補うのも手です。

サプリメントからマグネシウムを摂取する場合には耐容上限量を守るよう注意しましょう。

[6] 厚生労働省 e-ヘルスネット「マグネシウム

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